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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
87/232

12話 過去1

暗いです。それと直接的な暴力、流血表現がありますので苦手な方はお気をつけください。


 私は普通の家庭に生まれた、普通の子供だった。親が漫画やゲームが好きな人間だったので私もハマった。ただし、ゲームは一向にうまくならなかった。特に音ゲー。


 両親との仲も良好で、私はすくすくと普通に育っていった。ザ・平凡である。


 そして、大学に入って、仲の良い友人ができた。


 友人は漫画をよく読む、私と趣味の合う子だった。小柄で可愛い彼女だったが、中身は元気溌剌な子で、私はよく色々なところに連れ回された。たぶん一番仲が良かった。



 大学生活を満喫していたある日、友人はこっそり「彼氏ができた」と報告してきた。相手から告白されたのだという。私はそれを喜んだ。彼女は本当に嬉しそうだったから。それから、彼女は時折、嬉しそうに惚気てくるようになった。幸せそうだった。





 しかし、暫くしてくると、段々彼女の顔色が悪くなっていった。



 体調でも悪いのかと心配するも、最初の頃は「大丈夫」としか答えてくれなかった。彼女には彼女の事情があるから、私もあまり深くは聞かなかった。それでも一緒にいる間は彼女を注意深く見るようにしていた。


 それからまたしばらくして、彼女は学校で私を人気のない所に誘った。相談がある、と。私はそれに付いていった。彼女がいった場所には誰もいなくて、ここなら誰にも聞かれずに会話ができるな、と思ったのを覚えている。


 最初の頃より更に顔色が悪くなり、やつれた彼女が震えながら口を開く。




「彼氏が怖い」



 と。

 どういうことかと聞くと彼女は携帯を私に見せてきた。



 彼氏からの無数の着信にメール。夜に送られてきているメールの内容には彼女のその日一日の行動が記されていた。ついでにコメント付き。それを見た瞬間、血の気が引いた。


 メールには彼女の大学、家での行動も書かれていた。



 彼女の彼氏は他の大学だ。インカレサークルと言うのだったか、それで出会ったらしい。彼女はすぐに辞めてしまったが。それに彼女は独り暮らしだ。



 私が携帯を見ている隣りで彼女がポツリと話していく。


「最初は少し嫉妬深いくらいだった」


「だんだんエスカレートしていった」


「最近ではそんな感じになってしまった」


「同性の友人と話すだけでも怒る」



 などなど。支離滅裂になりながらも一生懸命に説明してくれた。確かに彼女の恋人は嫉妬深い。何度か会ったことがあるが、同性の友人である私に友人にバレないよう敵意むき出しの目を向けてきた。その目が私は苦手だった。恐怖を覚えたほどだ。


 男の目を思い出して震える私に、やつれた彼女はこう言った。



「別れてくる」




 恐らく彼女はもう決めていたのだと思う。私に話したのは心の整理のため、口に出して決心するためだろう。


 こんなストーカーまがいのことをする男だ、別れ話をするときは気をつけるよう、注意をして彼女と別れた。




 数日後、彼女は「別れられた!」と笑って報告してくれた。










 彼女の元気も戻って、笑って過ごせるようになった頃、私はバイトを終えて夜の道を一人で歩いていた。夜遅いからか、人気がなかった。


 歩いていると静かな足音が聞こえてくる。残業帰りのサラリーマンだろうと気にせずに歩いた。



 直後、背中に衝撃を感じた。その少しあとには痛みを。すぐ後ろにあった気配が少し離れた所で、私は後ろを振り向く。そこにはフードを眼深に被った男の姿。私より身長の高いその男は、何度かあったことのある彼女の恋人だった男だ。その男があの目を私に向けてきていた。男から少しずつ離れた私の視界に男の握っているものが目に映る。



 赤く染まった刃物。








 私は、自分がそれに刺されたのだと理解した。理解した瞬間私は痛みを自覚。激痛に顔を歪める。それを見た男は口元を歪め、私を地面に仰向けに押し倒した。護身道具など持っていなかった私は、何もできずに地面に倒れた。


 男はそれから何度も私を刺した。恐怖と痛みで体の動かない私を。何度も、何度も。


 私の四肢から力が抜けると男は笑った。


「お前が悪いんだ」


「お前が彼女を唆すから」


「お前さえ消えれば彼女は」



 そう独りごちた男は笑いながら走り去っていく。







 その足音と笑い声を聞きながら、私は意識を失った。





 静かな、冬の夜だった。

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