2話
さて、篠崎忍というキャラクターはどういう人物か。
思い返せば確かに中等部からの入学だった。しかも特待枠。家柄としては一般家庭。性格は……あまり覚えていない。あのゲームやってからどれほどの時がたっていると思っているんだ。12年も前だぞ。覚えているわけがない。しかしそんな私でも覚えていることがある。
ゲーム内での篠崎忍の髪色は、青だ。
そして教室で見た彼は黒髪だった。
まぁ当たり前ですよね。ここの世界、黒髪や茶髪はいるけど、青とか見ないもんね。青の髪は絶対に染めている。畜生。初等部からの三人の髪色は茶色と黒だから忘れてた。顔なんて数年あれば忘れるし。ってことはもう一人の攻略キャラの髪色も変わっている可能性が高いな。アイツ元々緑だもんな。染めていない限り緑はない。
まぁ考えても仕方がない。仲良くしようと言ってしまった手前、シカトするわけにもいかない。程々に付き合おう。うんそうしよう。今回こそはうまくやってやる。絶対に。
なんて、思っていたのに。
「篠崎忍です」
「間切波留です」
何故、私は篠崎と並んで生徒会室にいるのだろう。
いやまぁ先生に「もしよかったら生徒会に入ってみないか?」って誘われて、前世ではやろうと思わなかったそれに興味が湧いちゃって、先生に連れられて生徒会室に来たら、先に勧誘されていた篠崎がいた、だけなのだが。
あと何故か兄がいる。
先生に連れられたあと、篠崎と二人で待っていると現在の生徒会メンバーが集まったらしい。その中に兄もいた。寧ろ兄しかいない。帰りが遅かったり夏休みにも学校へ行ってたり、学園祭時期に忙しそうにしてたのは生徒会に入っていたせいか。なるほど。
聞いてないぞ。
生徒会に入っているなんて聞いてない、と兄を見れば兄は素知らぬ顔で立っていた。ちょっとは反応しよう。いやごめん、その外面の笑顔で反応されても困る。
「生徒会長は……」
「帰りました」
「あいつ……」
先生が聞くと兄が返した。生徒会長帰ったの。
「まぁ生徒会長は置いておいて。あそこにいるのが副会長の間切梓。一年の間切の兄だな」
「…………似てる」
「そう?」
「うん」
私と兄が兄妹と知った篠崎が私達を見比べてそう言ってきた。そんなに似てるかね。
「間切先輩の目をもうちょっと死んだ魚みたいにして、無表情にしたら本当にそっくりだと思う」
「それは私の目が死んでいるということか」
無表情はもう言われ慣れたが、死んだ魚の目はあまり言われないな。そんなにひどいか。
「高1はもう一人いるんだが……まぁいいか。……東雲は?」
「習い事です」
「なら仕方ないな。次、中2。二人の一つ上が」
「今日の朝登校していたら転んで頭を打って病院に運ばれたらしいです」
「……」
先生の目が死んでいる。大丈夫かな。
「まぁ二人は体験みたいなものだ。暫く様子みて、駄目そうだったら言ってくれ」
「「わかりました」」
「何かあったら先輩に。先輩が役に立たなそうだったら先生に言ってくれ」
待ってくれ。先輩が役に立たなそう、とはどういうことか。いやまぁ今の惨状を見たら納得できちゃうけど。ヤバイぞ。兄以外にどんな人間がいるのかすらわからない。凄くヤバイことしかわかってない。
私がこの生徒会に不安を抱いていると不意に扉が開いた。
「まだやってる?」
「やってますよ生徒会長」
入ってきた男。いつぞや、図書館で会った金髪イケメンの言葉に兄が返した。この人が生徒会長なのか。相変わらずキラキラしてますね。
「おや、真面目そうな子が二人いる」
「相良、帰ったんじゃなかったのか」
「帰ってる途中で今日集まりがあることを思い出しました」
「そうか。二人とも、彼が今年の生徒会長の相良当麻」
「こんにちは」
先生の紹介にあわせて相良先輩が挨拶をしてきたので会釈をしておく。
この生徒会、大丈夫かな。




