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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
68/232

ろくじゅうなな



『放課後、離にて待つ』



 下駄箱にこんな手紙が白い封筒に入った状態で入れられていた。因みに達筆な、筆で。


 まだ誰もいない教室で開けたそれの裏を見れば『四年 山内 哉太』と書かれていた。

 文面を見る限り、果し状である。が、差出人からしてそれはないだろう。彼とは数回しか会っていないし、喧嘩を売られる意味がわからない。


 取り敢えず、お呼ばれしたので行くだけ行こう。ヤバそうだったら速攻で逃げよう。そのためにも退路は確保せねば。






 放課後になったので私は退路を気にしながら離へと足を運んだ。離の入口前には私が最後に見たときより幾分身長の伸びた山内くんがいた。


「山内くん」

「間切先輩っ! お久しぶりです!」


 山内くんは私を認識するとこちらに走ってきた。あぁ、かわいい。


「久しぶり。今日はどうしたの?」

「先輩今日暇ですか?」

「うん。暇だね」


 今日は兄と圭が家事をやってくれる日だ。

 私がそう言うと山内くんはパアッと笑顔を浮かべた。かわいい。


「じゃあ少しだけ僕と遊びましょう!」




 可愛い笑顔でこんなことを言われて、断れるわけがないよね。





「間切はもう少し他人を疑ったほうがいいと思う」

「本当ですわね」

「間切さん……」



 離の中には三人がいた。知ってた。わかってたよ。だからそんな目で見るんじゃない。



「で、なぜ私が呼ばれたの?」


「遊ぼう!」




 そんなことだろうと思ったよ。




「今日は他の人たちが休みなんだよ。そうなったらもう遊ぶしかないよな」

「そだね……あ、ダウト」

「なんでバレたんです!?」

「勘かな」


 皆でダウトしながらのんびり過ごす。木野村は表情豊かだね。わかりやすくて良い。


「あ、そういえば押し入れからカルタも出てきたんだよね」

「へぇ〜」

 ここの押し入れ何でもあるな。


「これ終わったらやってみようよ」

「いいよ」

「僕カルタ好きです。あ、赤坂先輩ダウト」

「げっ」


 赤坂も顔に出やすかった。逆に辻村と山内くんは終始笑顔なのでわからない。


「間切の勝ちか」

「間切さん本当に表情変わらないよね」

「眉一つ動きませんものね……」

「先輩本当に表情変わらないんですね」


 酷い言われようだ。私はちょっと表情筋が仕事してないだけだから。心の中では感情豊かだから。

 



 その後、カルタやったりジェンガやったりしてたら下校時間になったので、私は帰宅準備を始めた。といってもオモチャ片すだけだけど。

 外を見ればもう日は沈み、暗くなり始めていた。


「最近どんどん日が短くなってるね」

「そうですわねぇ。お陰で私、帰りは迎えが来るようになってしまいました……」

「いいじゃないか。夜道は危ないし、怖いし」


 煩わしそうに言う木野村にそう言葉をかける。夜道は本当に危ないからな。迎えが来てくれたほうが安全安心だろう。

 私の言葉に木野村は目を瞬かせている。なんてすかね。


「間切さんにも怖いものあるんですね……」

「君は私をなんだと思ってるんだい」


 私にだって怖いものの一つや2つあるさ。


「先輩はなんで夜道が苦手なんですか?」


 玩具を押入れに片していた山内くんが戻ってきて私に尋ねてくる。夜道が苦手な理由ね。


「夜道は人が少ないし、暗いし、危ない人がいるからね」

「なるほど」

「うん。防犯グッズ持ってても必ず助かる保証なんてないしね。……さて、私はそろそろ帰るよ」


 そう言って立ち上がれば木野村が私の制服の裾を引っ張った。


「もしよろしければ私の迎えの車で送りますよ?」

「あぁ、大丈夫だよ。この時間ならまだ人も多いから」


 この時間なら学校や会社から帰宅する人がたくさんいるので、まだ平気だ。学校の完全下校時間はそんなに遅くないし、このくらいの時間ならまだ大丈夫。うん。

 そうですか、とちょっとだけシュンとした木野村に気遣ってくれたことへの礼を言い、離を後にする。玄関で4人に見送られた。




 っていうか、木野村の家の車に乗るところを誰かに見られたら凄く面倒なことになる気がする。気遣いは嬉しいが、リスクが大きすぎるのでちょっと……。

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