ろくじゅうろく
やらかした!!
「間切がこんなミスするなんて珍しいな」
返されたテストを見て固まる私に教師がかけた言葉はこれだった。
私は前世のことを考えると、小学生は二回目である。なので勉強もだいぶ問題なく進んでいて、テストはほぼ満点だ。算数とかは本当に簡単。
しかしだ、この世界は前の世界と似ているようで、違う。殆ど同じなくせに、少しずつ違うところか存在する。そしてそれらは、勉強にも影響を与えてくる。
算数、国語なんかはほとんど前と変わらない。四則計算も、漢字も同じだ。これらは勉強をあまりしなくても平気なので助かっている。
問題は理科と社会である。
「モンシロチョウ」がこの世では別の名で通ってるのと同じように、小学生の理科で出てくる生物の名前や物質名は前とは違う事が間々ある。前に本屋でちらりと見た時、元素名なんかは前の時と変わらなかったので、高校生の理科、化学なんかなら前の知識で解けるものが増えるとは思うのだが、今は小学生。前と名前が違う物は覚え直しだ。しかし小学生の理科は生活の中でも出てくる名前も多いため、その名称に触れる機会がそこそこ多いので覚えられる。まだマシである。
それに対して、社会はどうか。これは酷い。まず、地図の形は一緒なのに名前が違う。まぁこれはまだいい。地名はちょくちょく日常会話なんかででてくる。しかし、社会というものはそれだけではない。歴史、という最難関のものがある。歴史なんて人名、地名のパレードだ。これがまた以前と驚くほどかぶらない。「関ヶ原の戦い」とか存在しない。むしろ関ヶ原がない。同じような流れを辿っているのに名称はほとんど異なるという状態だ。こればっかりはもう覚え直すしかない。これが辛い。
そして今、私が手に持っているのは歴史のテストである。
「『関ヶ原の戦い』ってなに?」
「『家康』?」
「………………昔、何かで読んだ、話に出てきたんだ」
はい。間違えて前の世界の名称を書きました。
なに? と聞かれても答えられるわけがない。馬鹿正直に「前世ではこうだったんだよねー」とか言ってみろ。一瞬で痛い奴認定されるわ。
「それにしても波留ちゃんがこんなに間違えるの珍しいね……?」
「んー、ちょっと気が抜けてたみたい」
「それでも70点とれてるけどね。平均より上じゃない」
「はは。………………秋田くん? どしたの?」
私のテスト用紙を見て首をひねっている秋田くんに声をかけると彼は視線を私に移した。
「何でもないよ委員長」
「そう?」
「うん。委員長でも変なミスするんだなぁって思ってただけ!」
「さいですか」




