ろくじゅうさん
夏が終われば秋、新学期、そして学園祭だ。
私は今年も研究発表。楽で良い。やっぱり当日は遊びたいし。
私はとても楽なのだが。
「お兄ちゃんまだかな?」
「今日は遅くなるみたい。先に食べようか」
兄は大忙しらしい。今日の夕飯は圭と二人きりだ。寂しい。両親も今日は遅いらしいし。
「圭のクラスは学園祭なにやるの?」
「今年は……オリジナルの内容の劇」
「圭でるの?」
「今年は裏方にまわったよー。明日演劇部の先輩たちと顔合わせする予定!」
それから学園祭について二人で話しながら夕食を食べた。うーん、やっぱり寂しい。
夜、正確には夜中の一時に私は目を覚ました。
いつもは朝までぐっすりなのに珍しいなと思いながら身を起こす。喉乾いた。
ベッドから降りて、キッチンへ向かう。水飲んだらもう一眠りしよう。確実に寝不足だ。
たどり着いたキッチンは、明かりがついていた。中には何かを淹れている兄。
「兄さん?」
「! ……あぁ、波留か」
驚いた様子の兄が振り返り、私を見る。その手には湯気の立っているカップ。
「……兄さんコーヒー好きだったっけ」
「最近ハマった」
「ふぅん」
軽く相槌を返しながら水をコップに汲む。兄はコーヒーを飲み干してキッチンを足早に出ていった。
兄さん、苦いものは苦手だったはずなんだけどな。
妙に引っかかりを覚えたので兄の部屋に来てみれば、わかりにくいが閉じた扉の下方から光が漏れていた。起きてるよあの人。
うちの家族はみんな早寝の習慣がついているのか、親でも仕事がない限り夜11時には寝ている。兄も例外ではない。いつもはもっと早くに寝ているのに、どうしたんだろうか。
「…………」
「……波留?」
なるべく静かに扉をあけたつもりだったが、兄にはバレてたらしい。扉を開けたら兄がこちらを向いていた。身体は机に向かったままだけど。
バレているならと、堂々と部屋にはいる。
「寝ないの?」
「これ終わったら寝る」
「ふーん?」
何をやっているのかと机を覗けばそこには数式が書かれていた。あぁ、数学か。懐かしい。
「予習?」
「あぁ」
「そっか。邪魔してごめんね、おやすみなさい」
「おやすみ」
それだけ言って部屋を後にする。本当は勉強の邪魔をして寝かせたいが、そうもいかない。
それにしても、兄はもう勉強が習慣づいているはずだし、普段はこんな時間まで勉強しているはずはないんだけど……。そんなに忙しいのだろうか。




