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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
63/232

ろくじゅうに 六年夏休み

「あれ、間切ちゃん」

「有村さん! こんにちは」


 暫くして、今年も夏休みに入った。また例年通りふと思い立ってフラリと公園へでかければ、そこにいたのは有村さんだった。


「こんにちは。間切ちゃん今日はどうしたの?」

「ふと思い立ってフラリと公園に来ただけです。有村さんは」

「俺は知り合いがここに居るって聞いたから来たんだ」

「知り合いですか」

「そう。後輩。でも居ないみたいなんだよね」

 公園をぐるりと見渡す有村さん。そうか、いないのか。行き違いにでもなったのかね。


「間切ちゃんこのあと暇?」

「暇です」

 見た感じ鳩のお兄さんもいないし。

「じゃあ一緒にご飯食べに行こう」

「わーい」







 気軽に返事をしたらなんか高級そうなイタリアンレストランに連れて行かれた。奢ってくれたけど、一体いくらしたんだろうか。










「…………これは……」


 後日改めて公園を訪れれば、そこには鳩の大行列が。


 なるほど、この先にお兄さんがいるのかな。


 鳩の列を辿っていけばベンチに座るお兄さんを見つけることができた。お兄さんは寝ているようだ。




 そう、この、滅茶苦茶暑い、熱中症必死の環境下で。




「お兄さんお兄さん、こんなところで寝てたら溶けますよ」

「ん…………いや、流石に溶けない」

「寝起きいいですね」

「まぁね……寝ちゃったのか」

 なんとかお兄さんを揺さぶり起こしたあと、お兄さんの隣に腰掛ける。足元には綺麗に並んだ鳩がいる。


「寝不足ですか」

「んー、ちょっとねー」

「大丈夫ですか? スポドリ飲みます?」

「いいの?」

「さっき買ったので冷えてますよ」

 私はコンビニで買ったスポドリをお兄さんに渡す。まだ冷たくて気持ちいい。


「ほんとにいいの?」

「まだもう一本あります」

「なんで二本も」

「今日は暑いですからね」

 暑すぎて遠くの景色が揺らいで見えるくらいには。

 スポドリを飲んだお兄さんは改めて今の気温の高さを認識したようで、暑そうにパタパタ手で仰ぎ始めた。


「今年の夏は本当に暑いね」

「そうですねぇ」


 それからはまた他愛のない話をした。犬の話とか。犬の話とか犬の話とか。うん。犬の話ばっかだった。



「もう日が傾き始めたね」

「えぇ、私がここに来たのが少し遅かったですからね」


 まさか日が傾き始めるまで犬の話をすることになるとは思わなかった。


「はいこれ」

「…………………………………………わーお」


 そろそろ解散、の雰囲気の中お兄さんが私に渡してきたのはクラゲ味の飴だった。覚えてたのか。忘れててよかったのに。


「あとこれも」

「…………ありがとうございます」


 2個目の飴はとろろこんぶ味だった。取り敢えず飴にした時点でとろろ要素が消えている気がする。

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