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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
61/232

ろくじゅう




「あ、間切さん」

「間切ー」

「間切さん!」


「…………おやすみなさい」



 就寝前の自由時間、散歩と称して泊まっている建物内を彷徨いてたら件の三人に出くわした。なんというタイミング。部屋に戻ろう。



「まぁまぁ、そんな直ぐに部屋に戻らなくても」

「もうすぐ点呼の時間だし部屋に戻る」

 だからジャージの襟を掴まないでくれ。


 私が踵を返すと、赤坂が私の着ているジャージの襟を掴んできた。行動が早い上に遠慮がないぞこの子。


「点呼までまだ時間がありますわよ?」

「そんな急がなくても間にあうよ」

「それに他人の目も問題ないぞ? ここ、誰も来ないから」

「私が来たじゃないか……他の人も来るだろう……」

「他の奴はラウンジとか、庭とかに行くよ。こんな何もない場所に来るのは間切くらいだよ」


 今いる場所は建物の最上階の廊下だ。ココには何もない。先生たちが使うんであろう会議室ぽい何かがあるくらいだ。私はただのんびり散歩したかっただけなので何もなくても別に良かった。むしろ人が少そうな場所を選んできたんだ。まさか三人がいるとは思わなかったけど。



「それに、廊下が嫌なら会議室の使用許可貰ってるからそこで時間潰そう」

「どうやって……」

「「「おねだり」」」

 詳細は聞かないことにした。



「いやぁ、間切が来てくれて助かった!」

「何故」

「俺達じゃ点呼まで何して過ごせばいいのかわからないからな!」


 引きずり込まれた部屋の中で赤坂がトランプを切りながらそう言った。私が何を言うまでもなくトランプやろうとしてるじゃないか。私必要ないよね?

 部屋は本当に会議室だったらしく、円形に並べられたテーブルと椅子があるのみだった。簡素。


「というか、なんで君たちは最上階にいたの」

「私たちが部屋にいるとルームメイトの気が休まりませんもの」

 ふと疑問に思ったことを口に出せばさらりと木野村が答えてくれた。その間に赤坂がカードを各々に配ってくれる。とりあえずババ抜きをやるらしい。


「明日は友好を深めたいし部屋にこもる予定だけどなー」

「今日は野外炊飯もあって皆疲れちゃっただろうからね」

「ふぅん……」

 あ、ジョーカーきちゃったよ。


「ていうか俺トランプやり始めたけど、こういう宿泊行事のときって普通は何やるんだ?」

「トランプでもいいんじゃないかな」

「ほかは?」

「枕投げとか、恋話とか」

 私もそこまで詳しくない。何か皆でテンション高めの状態で遊んでた。

 話している間にもババ抜きは着々と進んでいく。早くババを取ってほしい。恋話というか単語を出したときに木野村がわかりやすく反応したけどそれはスルーした。木野村は女子だしね。恋話とか好きそうだ。


「恋話か。男子も話すのか?」

「さぁ」

「話すとしても、この4人じゃ話せる恋話ないよね」

「そうですわねぇ……ぁっ」

 よし、木野村がババもっていってくれた。

「枕投げは投げる枕がないからなぁ。ほか何かないのか?」

「あー、怪談とか……?」

 いや、怪談は違うか? どうだろ、私はしたことないな。


「怪談かぁ……」

「怪談……ですか」

「じゃあ怪談しよう」

 赤坂と木野村が少し目が泳いでいるのと、何故か辻村が人好きしそうな笑顔を浮かべたのがすごく気になった。









「赤坂くんと木野村さんはどうしたの?」


 部屋に戻る前に教師に一声かけてから行きたいとのことなので教師の部屋に来た私達をみた赤坂のクラス担任の一言目がこれである。


 因みに、赤坂は私のジャージの裾を、木野村は私の腕を掴んでいる。この二人はどうやらホラー系が苦手らしい。そして辻村はホラーが平気な上に話のバリエーションも豊かだった。つまり辻村が怪談を次々と話すせいで二人が怖がって私から離れなくなったわけだ。歩きづらい。


「お気になさらず。会議室を貸してくださってありがとうございました。僕達はもう部屋に戻ります」


 そんな二人を気に求めずに相変わらずの笑顔で先生に対応する辻村は凄いと思う。


「ほら、先生に声もかけたし部屋に戻りなよ」

 先生への報告を済ませたあとも私から離れない二人に声をかける。離れてくれないと部屋に戻れない。私の部屋はもう一つ上の階なんだ。あと人目につきたくないから離れて欲しい。

「間切いないとお化けに打ち勝てるやついなくなるじゃんか!」

「お化けはでないから安心しなよ」

 そして万が一おばけが襲ってきたら私は勝てない。私をなんだと思ってるんだ君は。

「メリーさんとか来るかもしれないじゃありませんか!」

「なら壁に背中をくっつけて部屋に戻るといいよ。そしたらたぶんメリーさん来てもメリーさん壁にめり込むから」

「それはそれで怖い……!」

 どうしろというんだ。

 一向に私から手を離さない赤坂たちに困り果て、元凶である辻村を見れば彼は楽しそうに笑っていた。笑っていないでどうにかしてほしい。


「二人とも昔っからホラー駄目だもんね」

「知ってたならやめてあげなよ」

 鬼か君は。


「こんな二人見れる機会早々ないからついね。……二人とも、さっき話した話は全部作り話だから安心しなよ」


「なーんだ」

「よかったですわ」


 さっきまでのは何だったのかと思うほど二人はケロリと元に戻り、私から離れた。


「二人とも素直だから」

「あぁ、うん、そう……」

 素直……。



 三人と別れて部屋に戻ると、早苗ちゃんと美野里ちゃんがヨガをしていた。ビックリ。

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