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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
59/232

ごじゅうはち 六年体育祭 2





「……………………君なんて説明したの?」

「『お題のものを探して走ってるときに転んで、それを目撃した間切が保健室まで送ってくれた』」


「…………へぇ」

「『おかげで怪我も悪化しなかったよ』」

「それだけ?」

「おう!」


 私が疑うような視線を向けても赤坂は笑顔で答えるだけだった。

 午前の競技が終わり、家族とお昼を食べていると後ろから妙に視線を感じ、嫌な予感がしたのでご飯を食べたあと屋上に逃げたら赤坂が追ってきた。そりゃあもう満面の笑みで。



 こっちは競技が終わるなり赤坂の取り巻きらしき人物たち数人に囲まれて疲れたというのに。



「間切それなに? タオル?」

「君のとりま……周りの人間がくれた最高級タオル」

「へー」

「『やるじゃない』って言われたよ」

「へぇ~」

「……………………すごく目立ってた」


 何故私が複数人の同級生に囲まれ、傍から見たらイジメられているかのような状態で最高級タオルを受け取らねばならんのだ。いや、原因はわかるけど。私の行動のせいだけど。なぜ私はあの時赤坂をお姫様抱っこしたのか。もっと他にやりようがあったはずなのに。


「でもこれで少しは普段も間切に話しかけられるなっ!」

「……嬉しそうだね」

「そりゃあ今までは我慢してたし」

「がまん」

 確かに、学校、特に同級生がいる場所で話しかけられられることはあまりなかったな。学園祭のときに荷物を運ぶのを手伝ったくらいか。あとは赤坂自身は話しかけてきていない。それに木野村と辻村もだ。


「だって間切目立つの嫌なんだろ? それに俺達と関わると周りが煩いからなー」

「……」

 私が目立つの嫌いなの理解してたのか。びっくり。

 私が驚愕で目を見開いていると、赤坂がニコニコしたまま私の隣に腰掛けた。


「ところで間切」

「ん?」


「携帯もってる?」



「もってるけど」


 相変わらず笑ったまま聞いてくる赤坂に携帯を見せると赤坂の雰囲気が明るくなった。



「連絡先交換しよう」








「…………」


 無言で携帯を嬉しそうに眺める赤坂が隣に座っている。

 屋上から見えるグラウンドではすでに午後の部が始まっていた。赤坂も私もあとは最後のリレーだけなのでまぁもう少しここにいても問題ないだろう。


「…………そんなに嬉しいの?」

「俺友達と連絡先交換したの初めてなんだよ」

「え…………」

 木野村と辻村の連絡先くらい登録してるよね? あの二人は友達じゃないのか? あ、幼馴染? 幼馴染は友達の枠の中に入らないのか? 特別枠? いや待て、その二人は別としても赤坂には友達いないのか? ぼっち?



「木野村とマサは携帯買ったとき、既に親が登録してたんだよ。あと周りに人はたくさんいるけど友達はいない」

「認めちゃうんだ」

「事実だ。友達の明確な定義とかわかんないけど、あの人たちは友達じゃないと思う」

「そう……」

 まぁ私も友達の定義とかは知らんからなんとも言えないな。友達の友達は友達とか言う人もいるけど、そうじゃないという人もいる。そう考えると友達って曖昧で難しい。


「だからあの二人を除くと間切が初めての友達だな!」





 私と赤坂が友達。




 ともだち、という単語が私の頭を何度も駆け巡り、「初めての友達とは直接連絡先交換したかったんだー」という赤坂の言葉は私の頭をすり抜けていく。私は鈍くなった思考を放棄し、手元のタオルをモフモフした。気持ちいい。




「なぁ、何でもないことで連絡してもいいか?」

「ん? あぁ、電話は出れないことのが多いけど、メールならいつでも。すぐに返信できるかわからないけど」

「ほんとに?」

「いいよ」

 メールなら誰かに見られることもそうそうない。すぐに返事を強要するわけでもないならそこまで苦でもない。問題ないな。

 少し不安そうな顔で聞いてきた赤坂は私の返答を聞くなり笑顔を浮かべた。うんうん。子供は笑ってたほうがかわいいよ。



 その後、リレー選手の集合時間が近づいてきたので、赤坂を先に校庭へ行かせる。私ももう少ししたら戻ろう。






 それにしても、なんか知らないうちに赤坂の中で私が友達に格上げされているとは驚きだ。「関わらない」という目標からどんどん遠ざかっている気がするし、これからどうしよう。


 座ったまま青く澄み渡った空を見上げる。とても眩しい。



 その日の夕方、赤坂から「綺麗」という短い文と夕日の写真が送られてきた。それに気がついた時空を見上げたらちょうど夕方から夜になるところだったので、私はそれを携帯で撮り、「そうだね」という文と共にその写真を添えて返しておいた。

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