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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
55/232

ごじゅうよん 五年学園祭 3




「あれ、間切さんだ」

「…………辻村くん、なにしてんの?」


 学園祭当日、今年は例年より人が多いのか、ごった返している人混みにもまれ、あまりの人の多さに具合が悪くなってきた私は空き教室に避難した。ら、そこには辻村がいた。買ったんであろうチュロスを食べている。



 因みに私は早苗ちゃん達とまわっていたけど逸れた。連絡しておいたから大丈夫だろう。私のこの迷子癖にも慣れたものだ。なんで改善しないんだろうか。



「今年はちょっと……運がなくて」

 ははは、と困ったように笑う辻村を見て、一人にしておいたほうが良いのかと踵を返そうと廊下を見たが、人が多すぎて外に出たくなくなったので扉を閉めてそのまま教室内へと足をすすめる。


「運が無い?」

「夏樹とまわろうとしたらいろんな人に絡まれてね。疲れたからここに避難」

「へぇ」

 空き教室には机や椅子がないので、仕方なく床に座れば辻村が駄菓子食べる? と駄菓子の山を差し出してきた。有難く貰おう。駄菓子って結構人気だからすぐ売り切れちゃうんだよね。


「間切さんは?」

「人混みに酔った」


 今年の人の多さは異常だね、とつけたし、貰った駄菓子を口に含む。甘い。


 あれ、そういえば。


「赤坂くんは?」


 赤坂とまわっていたのでは?

 辻村がいる教室には彼しかいない。赤坂はどこに行ったんだろうか。


「夏樹は学園祭まわってるよ。今頃とりま……周りの人から逃げてるんじゃないかなぁ」


 今、取り巻きって言おうとしたな? 取り巻きから逃げてきたのか。そんなに取り巻きいるのか。


「年々増えてるし、勢いも増してるね」

「……」

「間切さんって結構考えていることわかりやすいよね」

「…………へぇ」

 そんなにわかりやすいか。表情筋はあまり働いてないらしいが。雰囲気とかで判断されてるんだろうか? 考えていることがだだ漏れなのは困るな。

 自分で買ったジュースを飲めば、口のなかに甘い味が広がった。こうも甘いものばかりだと塩が欲しくなるな。


「……勢いも増すって言ってたけど、大丈夫なの?」

 血祭りとかの噂もその取り巻きの勢いとかが増したせいで立ってるのでは? 

「まぁ、今の所はね。それに姉さんたちも『中学はいるとだんだん落ち着いてくる』って言ってたし」

「へぇ」

 つまりあと一年はやばいと。近づかないでおこう。

 自分で買ったわたあめを食べていると視界の端に難しい顔で腕時計を睨む辻村が映る。何だろう。


「このあと何か用事あるの?」

「んー、今茜姉さんがクラスの方で店番してるはずなんだ。行きたいんだけど……また見つかったら面倒だしなぁ」

「君でも面倒とか思うんだな……」

「間切さん僕をなんだと思ってるの……」

 辻村雅直。シスコン。





「マサー、疲れたー! っと、間切もいる」

「あら、間切さん」



 辻村くんと軽く会話をしていると赤坂と木野村が教室に入ってきた。

 二人の頭が妙に派手なのは気にしない方向で行こう。赤坂の頭にひらひらのカチューシャ?が乗ってたり、木野村の頭にまた花が咲いてたりするけど、気にしない。私は気にしない。

「二人ともその頭どうしたの?」

「演劇部部室に逃げ込んだらあの人がいて」

「いじられましたわ」

 なるほど納得。


 二人は疲れた様子で床に座りこんだ。この子ら結構躊躇いなく座るな。


「間切は?」

「人混みによったから休みに来ただけ。だいぶ良くなったからそろそろ行くよ」


 そう言って立ち上がり、扉に手をかける。



 開けた先には来たときよりも混雑した廊下があった。




「………………無理だわ」


「まだ昼過ぎですもの、これからもっと増えますわよ」

「大繁盛だね……」

 ここ、初等部の校舎なんだけど。初等部はそんなに面白い催し物やってないはずなんだけどな。なんで今年はこんなに混んでるの。

 あまりの込み具合に絶望感を覚えているとポン、と肩に手を置かれた。後ろを振り返れば良い笑顔を浮かべた赤坂が立っている。




「今日は諦めて俺らと遊ぼう」





 夕方になり、人が少なくなるまで空き教室で木野村が持参したトランプで遊んだ。


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