よんじゅうく
5年生にもなれば女子も男子も恋愛話をし始める時期だ。いや、結構前からしてるみたいだけど。
「辻村様派と赤坂様派で分かれてるのよ」
5年生に上がるときにクラス替えがあったにもかかわらず、早苗ちゃん美野里ちゃん秋田くんとはまた同じクラスだった。そしてあの三人とはまた別のクラスだ。
「私は赤坂様派かなー。なんか良い」
「私は……辻村様かな。静かだし」
同級生を様付けで呼ぶことに違和感を感じるのは私だけなのだろうか。ここでは様付けするのが普通なのか? 私も彼らのことを様付けすべきだろうか。
「委員長は? どっちー?」
……秋田くんはなぜナチュラルに女子トークに混ざっているのか。いいけど。
そういえば私は今年も委員長になった。なんかもういいかなって。委員長だからといって他のクラスの彼らと関わり合いがすごく増えるわけでもなかったし。雑用は好きだし。そして副委員長は今年も秋田くんです。
「それぞれの魅力は?」
「赤坂様は可愛いよ! こう、犬っぽい!」
美野里ちゃんが説明してくれるが、それは褒めてるのか。犬。赤坂は犬。
「辻村様は落ち着いてるよ。あとなんかミステリアス……? って言ってた」
早苗ちゃんがオドオドしながらも説明してくれる。辻村がミステリアス。私にはシスコンにしか……。
「秋田くんはどっち?」
「二人と同性の俺に聞いちゃうかー」
私が聞けば秋田くんは困ったように笑った。しかし逃さない。この手の話題は私は苦手なんだ。逃げたい。
「どっち?」
「どっちでも」
「私も。」
「なんかねぇ、こう、本能が二人と関わるなって言ってる」
「……」
秋田くんは野生動物か何かかな? 私も人の事言えないけど。私も本能に従って行動するときあるけど。
「……もしかして…!」
私と秋田くんが話していると早苗ちゃんが真顔で、なにかピンときたような表情でこちらを見てきた。
「波留ちゃんの好みは夏鈴様……?!」
二人に興味がないとなるとそっちに行くのかー。なるほどー。まじかぁ。
「いや、うん、そうではなくて……えーと……」
「わかった! 二人は好みじゃないのね! じゃあどんな人が好み?」
美野里ちゃんが興味津々といった感じで聞いてきた。早苗ちゃんも目を輝かせてこちらを見ている。
好み? 私の? 今までの人生そういうのとほぼ無縁で生きてきてるからわからない。自分で行ってて悲しくなってきた。うぅん。好み。好み……。
「無害……な人」
酷くつまらない答えがでた。まぁでも事実これに限るので。
「無害?」
「それなら二人とも無害………………ふたりは無害だよ!」
美野里ちゃん、なぜどもったの。二人は、てなんだ。他は無害じゃないのか。
「ふたりは?」
「うーん、ほら、あの二人ってなんていうの……こう……侍らせてるじゃない?」
侍らす。
「その子達がねぇ……過激らしくて」
「なんかいろんな噂あるよね……。赤坂くんに下心を持って近づいた子を血祭りに上げたとか」
「辻村くんに馴れ馴れしくした子を追い込んだーとかねぇ」
「えっ何それ怖っ」
「あと木野村さんの周りにいる子も結構過激らしいよ〜」
この学校物騒だなぁ……。
まぁでも、関わらなければいいだけの話だし。幸い今年もクラスは離れたし。うん。大丈夫。今まで通り関わらなければ……。
いや、結構関わってるな?
辻村はたまに家に来るし。圭が呼ぶし。赤坂とも体育祭のときとか話すし。木野村の家にも遊びに行ったことあるし。
やばいな。意外と関わってる。むしろ向こうから来てる。
最近気にしてなかったけど、そういえば私三人とかかわらないように逃げてたんじゃなかったっけ。忘れてた。
しかし今更関わらないようにするにもな……向こうから来るし。逃げたら追ってくるし。
「委員長」
「ん?」
「諦めって肝心だと思うよ」
「なんの話?」
秋田くんの唐突すぎる言葉に首を傾げると秋田くんはスッと無言で指差す。そっちには恋話(仮)で盛り上がる二人しかいない。
「波留ちゃんはやっぱりカメラが恋愛対象なんじゃない? ずっとカメラ持ってるし」
「でも人じゃないからなぁ……」
「そういう趣味の人もいるって聞いたよ」
「そっか……そういうひともいるんだ……」
「うん。…そっと見守ろう?」
「そうだね……」
んんんん??? なんか私の恋愛対象が無機物になってるぞ?? なんで?? なんで二人はそんな慈愛に満ちた目をこちらに向けてくるの?
「秋田くん……?」
「白熱する恋愛トークって止められないものだよ委員長」
「止めてくれよ」
「無理。それに面白かったから」
「……」
ま、害があるわけじゃないし……いいか。うん。諦めって肝心だよね。




