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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
42/232

よんじゅういち

 1学期もあと少し、という日の朝、私の下駄箱に一通の手紙が入っていた。

 それには放課後、指定され場所に来るように書かれていた。妙に字がうまい。

 私がその手紙を持っているのを見た美野里ちゃんは「ラブレター!?」と騒ぎ、秋田くんは「果し状? 武器いる?」とバットを寄こしてきたり、早苗ちゃんは心配しすぎて泣き始めたりとだいぶ大変なことになった。






「あれ、山内くん?」

「あ、間切先輩!」

 指定され場所にいたのは山内くんだった。まさかあの手紙は山内くんからのものなのだろうか。


「来てくれてよかったです!」

「あ、あの手紙山内くんからだったんだ」

「はいっ」

「そっか、どうしたの?」

「間切先輩、僕と遊びましょう?」

「うっ」

「先輩は今日お時間があると伺いました! 駄目ですか?」

「ぅぐ……」

 首を傾げながら、可愛く言われてしまっては断ることなど出来はしない。しかし、色々と嫌な予感がする。山内くんが私の下駄箱を知っているのも、私にこのあと予定がないことを知っているのも、そもそも山内くんが私を呼び出すこと自体怪しすぎる。


「だめですか?」

「だ…………めじゃ、ない、です……」

「わーいっ」



 そして、連れて行かれたのは案の定あの離れだった。泣きたい。

 中に入り、以前通された部屋とは別の、洋風の部屋に行くと赤坂たちがドミノをやっていた。ただし、使用しているのは明らかにジェンガのピースである。ドミノっていうか何かの儀式に見える。


「何してるの……?」

「お、間切きた!」

「このピースの遊び方がわからなかったから、取り敢えず並べてるんだよ」

「あと2つですわ」

「あ、うん。そう……」


 もう、何も言うまい。





「つまりこれはジェンガっていうおもちゃなんだな?」

「そうそう。ほら、ピースの側面にジェンガって書いてある」

「それ、持ち主の名前じゃなかったのか」

 ピース一つ一つに名前を書くなんて、なんてマメな持ち主なんだろうか。普通これをしまう箱とかに書くと思う。

 ジェンガを一度片したあと、ソファに案内された私はテーブルを挟んで向かい側に座る赤坂、辻村、山内くんにジェンガの説明をしていた。三人ともマジマジとジェンガを見ている。因みにこのジェンガの箱はないらしい。


「お茶がはいりましたわ…きゃっ」

 携帯でジェンガについて調べているとお茶を入れてくれていた木野村の可愛らしい悲鳴と共に私は頭から生温い液体をかぶった。良い香りがする。


「間切!? 大丈夫!?」

「間切先輩! こっち!」

「えっ」

 何やら慌てた様子の山内くんに腕を引かれて連れて行かれたのは浴室らしき場所で。ここ、まじで家みたいな構造だな。むしろ家か。家だな。


「ぅわっ」

 風呂まである離れに驚いていると頭上から勢いのある冷水が降ってきた。あぁ、シャワーか。冷たい。

「や、火傷には流水がいいって……!!」

 そう言う山内くんは涙目である。そして私はびしょ濡れ。ついでに手に握ったままだった携帯も。



「山内くん、あとは僕がやっておくから、木野村さんたち手伝ってきてくれるかな?」

「辻村先輩ぃ……」

「ほら、大丈夫だから」

 笑顔を浮かべた辻村が不安そうな顔をする山内くんを風呂場から追い出す。辻村の腕にはバスタオルらしきものがあった。


「びしょ濡れになっちゃったね。ごめん」

「平気。タオルありがとう」

 辻村からタオルを受け取り取り敢えず頭を適当に拭う。シャワーは辻村が止めてくれた。

「痛い所とかない? 一応保健室いく? 服は……どうしよう」

「たぶん火傷はないよ。あれ、そこまで熱くなかった」

 紅茶を淹れるならもっと熱いと思うが、木野村は慣れていなかったのだろうか。私が被ったものはあまり熱くなかった。生ぬるいお湯をかぶった気分だ。事実生温かった。そしてその後冷やされたから風邪ひきそう。寒い。

「ならいいけど……着替えはどうする?」

「兄に連絡するよ」

「なるほど」

 私は早速兄に連絡を取ろうとして、固まった。



 携帯がつかない。



「…………僕の携帯、弟君の電話番号なら入ってるけど」

「貸してください……」


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