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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
41/232

よんじゅう

 兄は中等部へ、圭は3年生、私は4年生へと進んだ春、いつもと変わらぬ平日の放課後。



「……お邪魔してます」

「……いらっしゃい」


 そんな平和な日々をを満喫していた私の目の前には優しく笑う辻村がいる。


 習い事を終えて、夕飯の買い物をしてから家に帰るとリビングに辻村がいた。そして辻村は圭の勉強を見ているようだ。どういうこと? なにがどうしてこうなったの?


「おかえりお姉ちゃん!」

「ただいま」

「みんなと遊んだ帰りに辻村先輩見つけたから連れてきたの!」

「辻村くんごめん。うちの弟が本当にごめん」

「いや、暇だったしいいよ。それにしても間切さん荷物多いね、どうしたの?」

「夕飯の買い出し」

 買ってきた物を冷蔵庫に入れていると圭がパタパタと2階にあがっていく音が聞こえた。どうしたんだろうか。

「圭?」

「弟君は勉強道具片しに行ったよ」

「そうなんだ。もう終わったの?」

「キリのいいところまでね」

「勉強見てくれてありがとう」

「僕も楽しかったから」


「お姉ちゃん帰ってきたし遊ぼう!! ウノやろう!」


 部屋から戻ってきた圭の手にはウノが握られている。それ取りに行ってたのね。圭はすごくワクワクした顔で私と辻村を見ている。かわいい。

「……辻村くん時間平気? ウノわかる?」

「今日はこのあと用事もないから時間は平気だけどウノはやったことないかな。ウノって何?」

「トランプ的なもの」

「へぇ」

 辻村は軽く頷くと圭からウノを受け取ってまじまじと見始めた。というか三人でやるのか。夕飯いつ作ろう。そして辻村は何時まで家にいるんだろうか。


「ただいまー。っと、辻村くんいらっしゃい」

「お邪魔してます」

 帰宅した兄が顔を出した。いつもより少し早いな。

「何やってるの?」

「ウノ! お兄ちゃんもやろー」

「手洗って着替えてくるから待ってて」

「はーい!」

 兄が去ると圭は辻村にウノについて説明をし始めた。

 ……いつ夕飯作ろうかな。




「そろそろ夕飯作ってくる」

 ウノが終わり、時計を見れば結構な時間になっていたのでそう言って立ち上がる。そろそろ作り始めないといかん。

「もうこんな時間か」

「今日のお夕飯何ー?」

「カレーかな」

「やった! 人参抜きがいい!」

「食べなさい。小さく切るから」

 好き嫌いはだめだ。栄養が偏る。

「辻村くんもう遅いし帰るなら送っていくよ」

 見れば辻村はこちらを凝視していた。なんだ。


「間切さんがお夕飯作るの?」


「兄と一緒にだけどね。うちの親共働きだから」

「最近は波留一人で作ることが増えたかな」

「へぇ…」

 もともと両親が共働きで、兄と私がある程度大きくなってからは二人で作っていた。が、兄が中等部へ進学してからは兄の帰りが遅くなってしまうことがあるので、そのときは私が作るようになった。圭はお手伝い。そろそろ圭にも本格的に料理を教えてもいいかもしれない。


「辻村先輩も食べて行きましょう? お姉ちゃんが作る料理美味しいんですよ?」

 圭が辻村の服の裾をチョイチョイっと引っ張ってそう言った。

 最近敬語を使い始めた圭が可愛い。本当にかわいい。ムービーに収めたいくらいだ。今度最新のビデオカメラ買ってこよう。ところで圭。妙にハードル上げるのやめようか。私はレシピ通りに作っているだけだから。手順とか材料とかさえ間違えなければ誰でも作れるからね。私が特別うまいわけじゃないから。むしろ兄さんのほうがうまいから。だから辻村、君はそんな期待した瞳をこちらに向けるな。そんな大層なものでないから。君ん家の料理のほうが美味しいだろうから。

「ちょっと待ってね」

 辻村は私から視線を外すと携帯を取り出した。


「もしもし茜姉さん? うん。お夕飯なんだけど…」

 どうやら通話相手は茜さんらしい。茜さんに確認を取るのか。親御さんじゃないのかそこは。


「いいって」

「やったー!」



 結局その日は辻村と一緒に夕飯を食べた。辻村はニコニコしながらカレーを食べていた。満足していただけたようで何よりです。こっちは辛さとか味とか、君が気にいらなかったらどうしようかとハラハラしてたよ。そして帰りは茜さんと千裕さんが車に乗って迎えに来た。車大きいですね。てかその運転席に座ってる人だれですか。運転手さん? マジか。金持ちすごい。







「お姉ちゃん! 辻村先輩のお姉ちゃんたちがね! お姉ちゃんの料理食べてみたいって!」

 風呂から上がったらリビングで携帯をいじっていた弟からそんな報告を受けた。

「なにそれ誰情報?」

「辻村先輩! メアド交換したの!」



 弟が辻村とメールする仲になっていた。いつの間に。




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