よん
その日は委員長同士の顔合わせだった。顔合わせする意味とは。どうせ先生の雑用くらいしかしないのに。その日はそれで解散。私はそのあと校舎を見て回った。この学校の敷地は広い。一部の人間しか選ばれない委員会のようなもの…………なんだっけ。たしか銀杏会…だっけ? 植物の名前だった。その銀杏会の集まりに使われる離れのようなもの、高等部の校舎、中等部の校舎、体育館、温水プール、薬草園…etc.
私はそれらを刻むように写真に収め続けた。前世では出会えなかったものの数々を。美しすぎるこの世界を。
家に帰り、委員長になった旨を伝えると家族は激励をくれた。
それから授業も始まり、平和な日々か続いた。クラスが違えばやはり彼らに会うこともない。私はクラスメイトと楽しく過ごしている。私のクラスは平和だ。そう、私のクラスは。
質の良すぎる給食を食べた後、昼休みに廊下から奇声が聞こえてくる。
「またか」
「まただねぇ」
秋田君は呆れたように呟いた。私もそれにうなずく。
悲鳴は赤坂ファンのものだ。大方、木野村さんと喧嘩でもしているのだろう。大変だな。うちのクラスに被害が及ばないことを願う。うちのクラスの女子にも赤坂、辻村ファンはいるが皆おとなしい。助かる。
そんな風に油断していた折、私のクラスの前の扉がぶち破られ、そこから男子が二人流れ込んできた。ふむ。さっきの奇声には男のものも混ざっていたか。二人とも見たことのない子だからほかのクラスだろうか。二人は取っ組み合いのけんかをしている。誰だこの学校が金持ちの通う学校とか言ったの。どこが金持ちだ。ただの子供じゃないか。金持ちのイメージ崩れた。
私と秋田君は暴れる二人からクラスメイトを遠ざけ、後ろの扉から外に出させる。秋田君はそのまま走って先生を呼びに行った。……喧嘩を止めたいところだが私に止められるわけもないので放置でいいか。でもぶつかるといけないから前の方にある机は移動させとこう。
私は静かに教室へ入り机を音をたてないように動かした。動かし終わったところで先生が来て二人の仲裁に入る。
「まさか扉をぶち破るとは…」
「あの扉…直るかなぁ…」
「うーん、扉が外れただけだからね……よっと」
扉をレールにはめると扉は再び動いた。よし。
「委員長すごいな」
「はめただけだよ」
「すごいね」
聞いたことのない声に早苗ちゃんと秋田君、私が後ろを振り返る。そこに立っていたのは辻村雅直だった。
「どうも……?」
「さっきはうちのクラスの男子が迷惑をかけたから…ごめんね」
「別に貴方が悪いわけではないのでいいです。被害もこれだけなので」
「そう? よかった」
辻村が下げていた顔を上げると同時に予鈴が鳴る。辻村はもう一度謝ってから教室へ戻っていった。後ろに彼がたっていたときは心臓が止まるかと思った。
「…かっこいい…」
「ほんとに…」
ほう…っと秋田君が惚れ惚れとした表情で呟くと早苗ちゃんが同意した。
辻村雅直のファンが二人増えた。