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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
37/232

さんじゅうろく


 今年の夏休みはすごく平和だった。そりゃもう平和。辻村たちとも会わなかった。公園では鳩のお兄さんと会えたし、飴も貰った。因みにきんぴらごぼう味だった。家族と旅行にも行けたし、宿題も恙無く済ませることができた。1ヶ月ほどの夏休みは平和そのものだった。新学期も平和で、学園祭の出し物決めもサラッと決まったし、のんびりまったり過ごしていた。のだが。




「……」


 気がつくとベッドの上にいた。なんでだろうか。ていうかここはどこだ。保健室?

 ベッドから起き上がり、空間を仕切っているカーテンを開く。


「……辻村?」


 どうやらカーテンの先はもう一つのベッドだったようだ。そこには辻村が寝ていた。

 辻村がいるということはここは保健室だろうし、保健室で寝ているのなら体調が悪いのだろう。起こしては悪いので静かにカーテンを閉める。それにしてもなぜ私は保健室で寝てたんだ。


「お、間切起きたのか」

「赤坂くん……? 何してるの?」

「トランプピラミッド作ってる」


 保健室では赤坂がトランプで遊んでいる。トランプピラミッドはあと一段で完成するところだ。凄いな。私あれ一段目も完成させたことないんだけど。


「授業は?」

「もう放課後だよ」

「……本当だ」

 窓に目をやると日が傾き始めていた。まじか。

「怪我、大丈夫か?」

「けが?」

 完成したピラミッドを携帯で撮っている赤坂が尋ねてきた。怪我とは。

「それ」

「ん? …………うわ、なんだこれ」

 赤坂が指差した私の腕を見ればいくつかアザができていた。まだ制服が半袖なので目立つ。確か教室にセーターがあるはずだから後で着ておこう。

「まさか覚えてないのか?」

「なにを」

「間切、お前階段から落ちたんだよ」

「え」




 赤坂が言うには、私は昼休みに階段の所でふざけていた上級生にぶつかって階段から落ちたらしい。手足にアザができるって、どんな落ち方をしたんだろうか。赤坂は見たわけではないらしいが直ぐに噂を耳にしたと。確かに言われてみれば午前中の授業は思い出せるがそれ以降の記憶がないな。給食を食べて、5時間目が図画工作で移動教室だったので移動しようとして……あぁ、それで階段を使おうとして落ちたのか。なるほど。となると私は結構な時間寝ていたみたいだな。


「間切先輩が間切の荷物取りに行ってるから間切はここで少し待機な」

「わかった。赤坂くんはここで何してんの?」

「マサの目が覚めるの待ってる」

「辻村くん? そういえば寝てたね。どしたの」

「体調不良。最近寒くなったから」

「へぇ」

 確かに、半袖で過ごすには辛くなってきたな。私はトランプをかたし始めた赤坂の前の席に座り近くにあった本を手に取る。てか保健室の先生どこいった。




「波留起きたの」

 赤坂と暇つぶしにスピードをやって遊んでいると兄が来た。兄は私の荷物は持っている。そして兄の後ろに二人の男の子が立っている。誰だ。


「兄さん」

「ちょうど良かった。…………二人とも」

 兄が自分の後ろにいた二人に声をかけると二人がおずおずと私の前にでてきた。

「?」

「「すみませんでした!」」

「!?」


 いきなり頭を下げてきた二人は階段の所でふざけていた人たちらしい。なるほど、この人たちにぶつかってしまったのか。6年生だったのね。

 謝ったあとも一向に頭を上げなかった二人を何とかなだめ、お帰り願っていると背後からカーテンの開く音がした。

「……何事……?」

 まぁ、そうなりますよね。

 目が覚めて、同級生が上級生に頭を下げられていたらそりゃ困惑する。

 上級生二人をなんとか帰して、起きたばかりの辻村に簡単に説明すると怪我を心配された。問題ない。手足にアザができただけだ。

 一応頭を打っているかもしれないということで病院に行くことになった。母親がもうすぐくるらしい。今日も仕事だったはずなのに、申し訳ない。兄は圭と一緒に帰るらしい。


「間切さん、またね」

「間切またなー」


 辻村の目も覚め、保健室の先生も帰ってきたので二人は帰っていった。そのすぐ後に母親が迎えに来たので私も病院へ向かう。





「ただいま」

「お帰り。大丈夫だったか?」

「問題なし」

「そりゃよかった」


 私が無事なことを報告すると兄は携帯で何かを打ち始めた。メールかな。


「一宮さん?」

「いや、赤坂くん」



 いつの間にか兄と赤坂がメールをする仲になっていた。


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