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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
36/232

さんじゅうご

 少し緊張しながら間違いのないように電話番号を入力し、通話ボタンを押す。


『はい』

「こんにちは。東雲学園初等部3年の間切波留です。写真がプリントできましたのでご連絡させて頂きました」

『間切さん! わかったわ! では明日の放課後教室で待っていてくださる? すぐに行くから』

「わかりました」






 体育祭から数日経ち、写真が出来上がった連絡を入れたのが昨日。正直すごく緊張した。あと写真の枚数が結構な数いってるんだけど、どうしようこれ。持ってきたはいいけどこれ全部渡すの? 意外と重いけど、あの人持てるの? 生粋のお嬢様っぽいしペンより重い物持ったことがないとかありそう。


「間切さん!」


 みんなが帰ったあとの教室で待っていると東雲先輩が教室の扉から顔を出した。


「東雲先輩、これ写真です」

「ありがとう! まぁ、こんなに沢山! 嬉しいわ! お礼をするから少し付き合ってちょうだい」

「いえ、大したことはしてませんのでこれで」

「……駄目かしら」

「駄目じゃないです」

 前からわかっていたことだけれども私は幼い子どもに弱いらしい。5年生なのに……! 先輩5年生なのに!! 私より歳上なのに誘いを断ってシュンとされると良心が痛む。辛い。

 私が折れるのを見た東雲先輩は嬉しそうに私の手を引いて歩いていった。




着いた先が銀杏会で使う離れだったので逃げようとしたけど逃げられなかった。意外と力強いぞこの人。


「もう皆いますわね〜」

 皆?

「あれ、間切だ!」

「間切さん!?」

「あら、間切さん」


 三人がひょっこりと姿を現した。

 そりゃそうですよね。メンバーですもんね。そりゃいるわ。帰っていい?


「遊ぶわよ〜」


 手を繋がれたまま中へと連れられる。靴、靴並べないと。脱ぎっぱなしはいかがなものかと思うよ。


「あの、遊ぶとは」

「そのままの意味よ?」

「あ、はい」


 以前通された和室に通されるとすでに3人、そして小さな男の子が一人座っていた。


「3年の3人はもう知ってますわね。間切波留さんです。間切さん、あちらの男の子は」

「1年の山内(ヤマウチ) 哉太(カナタ)です!」

「山内くん」

「はい!」


 試しに呼んでみると元気の良い返事が返ってきた。かわいい。


「で、私がつれて来られた理由は」

「遊ぶためよ! 今日は中高生の方々はテスト期間で来れませんから、私がここの最年長! なので今日は私のやりたいことをやりますわ!」

 え、本当に遊ぶためだけに連れて来られたの? 私いなくても良くないですか?

「人数は多いほうが楽しいでしょう?」

「そうですね…」

 とてもよい笑顔を向けられた。だめだ、帰れそうにない。取り敢えず家族に連絡を入れておこう。

 私が連絡を入れている間、5人は押し入れの中を漁っていた。そこに何入れてるんですかね。おもちゃ?


「銀杏会っていつも何してるんです?」

「今年はお茶会が多いかしら。今年は高校2年生の方がここを仕切ってますわね。毎年仕切る方によって雰囲気が変わりますわ」

「へぇ」

「ところで間切さん、間切さんはトランプで遊んだことは?」

「ありますよ」

「ではまずそれで!」

 東雲先輩が大事そうにトランプを持って移動してくる。ちらりと見えた押し入れにはジェンガや人生ゲーム、UNOなどがみえた。


「なにやるんですか? ババ抜き? 神経衰弱? ポーカー? 大富豪?」

「ババ……?」

「しんけいすいじゃく?」

「ポーカーは聞いたことあります!」

「大富豪ってなんです?」

 赤坂、辻村、山内くん、木野村がそれぞれ反応を示す。なんでそんな知りませんみたいな反応をするんだ。


「間切さん、私達、トランプで遊んだことがありませんの」




「え……」

「チェスとかならやったことありますけれど」

「そうなんですか」

「ですから、貴方を連れてきたのです! 私達よりこういったものには詳しいでしょう?」

 普通の小学生はトランプくらいやったことあると思う。金持ちってわからない。私チェスのほうがよくわからんよ。駒の名前くらいしか知らないし。

「…………とりあえずババ抜きからやりますか」


 ルール説明などをしてカードを切り、各々に配る。そんなに難しいものではないし、簡単にできる。だからこそ、子供の室内遊びの定番だと思っていたのだが違うのだろうか。自分の常識に自信がなくなってきた。


「皆さんはこういう遊びはしないんですね」

「しませんわねぇ。中高生の方がいるときはあまり騒げませんし。こういうものはみんなで騒ぎながらやるのが楽しいと聞きましたから」

「そうですね。ワイワイやるのが楽しいです。あ、上がり」

「間切早っ!」

「運が良かった」

「あ、僕も上がりだ」

「マサも?!」

「お二人とも早いですわねぇ」

 私と辻村が上がると赤坂は驚いていた。カードのひきによってこんなもんだろう。山内くんと木野村は顔をしかめている、どっちかがジョーカーでも持ってるのかね。

 それにしてもお茶会かぁ、楽しいんだろうか。私はそんな上品なもの参加したことないからわからん。

 あ、そういえば。


「東雲先輩ってこの学校の名前と一緒ですけど、なにか関係あるんですか?」

「全く、これっぽっちもありませんわねぇ」

「偶然ですか」

「えぇ。因みに、私はもともとここから少し離れたところに住んでいたのですけれど両親がこの学校を見つけて『名前一緒だ! 面白い!』って言って引っ越してここに通うことになったのよ」

 そんな理由で学校と引っ越しを決めるって金持ち凄いな。



 結局その後は大富豪も神経衰弱も七並べもやった。UNOなどは別日にやるそうだ。私もいる前提で話を進めないでください。ここに出入りするところを誰かに見られたら目立つどころの話ではない。


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