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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
35/232

さんじゅうよん 3年体育祭


 体育祭当日、私の組、白組の応援席にパラソルが立てられていた。

 あぁ、今年は白組なのか。


 しかし去年は屋上から見たパラソルだが、いざ間近で見てみると意外と大きい。どんな人が使うのか気になるところだが、赤坂曰く変な人が立てているらしいのでなるべく関わらないようにしよう。遠目で見ていよう。




 そう、思ってたんだけれども……。



「間切さん、見てくださいな! 夏鈴さんが走ってますわ!」

「そうですね」


 体育祭はじまってものの数分で絡まれました。


 パラソルの主こと東雲(シノノメ) 瑠奈(ルナ)さんは体育祭が始まってすぐ、応援席の近くで転んでいた。目の前で転ばれたので思わず声をかけたらパラソルの主だったのだ。パラソルのところに戻ると彼女は同級生に囲まれたので立ち去ろうとしたら何を思ったのか彼女に引き留められ今に至る。なんでこうなった。


 彼女は辻村たちを弟、妹のように可愛がっているらしく、三人が出場してると楽しそうに応援している。別の組だけど、まぁいいんじゃないかな。自分の組も応援してるし。


「やっぱりプロを呼んでビデオや写真に残しておけばよかったわ」


 それは体育祭前、三人に嫌がられたらしい。体育祭にプロを呼ぶとか……発想がすごいな。金持ち凄い。


「間切さん、写真撮れました?」

「撮れましたよ。こんな感じです」

「まぁ! 綺麗に撮れてるわね! 後でプリントしてくださいな!」

「わかりました」

 私がカメラを所持しているとわかると東雲先輩は辻村たちの写真を撮るよう頼んできた。写真は後でプリントして渡す事になっている。


「瑠奈様、そろそろ集合時間ですよ」

「あら、もう? 今行くわ」


 東雲先輩と応援に徹していると東雲先輩の同級生の女子が声をかけてきた。この時間に集合ということは東雲先輩は二人三脚に出るのかな。


「東雲先輩頑張ってください」

「えぇもちろん! でもね、間切さん」

「?」


「私、とことん運動できないのよ!」


 高らかに宣言した東雲先輩は優雅に集合場所へ向かっていった。そうか、運動音痴なのか……。


 東雲先輩は競技中に一回、退場時に一回転んでいた。ドジっ子。

「委員長、リレーの選手集合だって」

「一緒に行こー」

「行こう行こう」

 秋田くんと美野里ちゃんと共に集合場所へ向かう途中、チラリと救護テントを見れば東雲先輩と一緒にコケた相方の人が手当を受けていた。


 リレーはいつも通り全力で走った。そして入退場の時にちらりと私の視界に入る赤坂の目つきが怖かったので速攻で逃げた。



「母さんのご飯美味しい……生き返る」

「波留は何でそんな疲れ果ててんの」

「お姉ちゃん大丈夫?」


 パラソルの人との予想外の出会いと赤坂から逃げるために精神をすり減らしました。家族が癒やし。母のご飯は美味しいし父は私の体調を気遣ってくれるし兄と弟は頭なでてくれるし。本当に家族いいわ。大好き。もうずっとこの空間にいたい。



 どんなに嫌がっても時は過ぎるもので、午後の部が始まってしまう。午後の部が始まった途端コチラに向かってくる赤坂を見つけたので東雲さんに「体調悪いので休んできます」と言って早足で応援席を後にした。さて、どこに逃げようか。




 校舎に入ると、鍵の閉まっていない教室があったのでそこの教壇の下で息を潜めて逃げ切ることにした。

 人目が少なくなってきたところからダッシュで逃げていたのだが、ふと後ろを振り向いたときに見えた赤坂が無表情だった。すごく怖かった。あれに全力で追いかけられるとかホラーゲームかよ。なんで無表情なんだ。怖いよ。




「みーつけた」

「………見つかった」


 私を見つけた赤坂は満面の笑みである。怖い。

 赤坂は私が教卓の下から這い出て来ると床に腰掛け、私も隣に座らせた。


「見つけるの早かったね」

「鍵開いてる教室ここしかなかったからな!」

「左様ですか……」

 走って逃げ続ければよかった。

「……間切、東雲先輩と仲良さそうだったな」

「そう?」

「そう! ズルイ!」

 何がズルいのか。

「東雲先輩と仲良くしたいの? あの人銀杏会の人だよね?」

「そっちじゃない! 俺は間切と仲良くしたいの! わかる!?」

 ガシっと私の肩を掴む赤坂の剣幕がすごい。何なんだ。

「俺は間切とあんまり会話できてないのに東雲先輩だけズルイー!」

 ガクガクと身体を揺さぶられる。取り敢えず赤坂が何故か私と仲良くなりたいというのは理解したから揺らさないでほしい。酔っちゃうから。

「俺と仲良くしたら絶対目立つし! 間切目立つの嫌だって言うし! 間切は携帯を携帯しないからメアドも交換できないし!」

「いや、うん、ごめん……」

 実は今日も携帯を家においてきたんだ。どうせ使わないし。ていうか君目立つ自覚あったんだね。

「東雲先輩ずーるーいー!!」

「ぅぇぇええ」

 揺さぶられすぎて気持ち悪くなってきた。どうしよう。この駄々っ子どうしよう。



「…………粗方叫んだらスッキリした!」

「そりゃよかったね……」

 解放してもらったのはいいが揺さぶられ過ぎてまだグラグラする……。

「結構時間経っちゃったし、戻るか!」

「おー……先に戻ってて」

「おう! またな!」


 元気いっぱいな赤坂は軽い足取りで教室を後にした。

 それにしても、仲良くしたいと面と向かって言われるとは思わなかった。悪い気はしないものだな。でも赤坂は高校で起こるだろう騒動の渦中の人間だし。騒動に巻き込まれるのはゴメンだ。それに仲良くなって、万が一木野村に目をつけられたら困る。今の所木野村がそんな酷いことをするような人間には思えないが、恋は人を変えると言うしな。どうしたものか。





「間切さん、はいこれ」

「これは?」

「私の携帯の番号ですわ。写真が出来上がったら連絡してくださいな!」

「わかりました」


 東雲先輩の電話番号をゲットした。


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