さんじゅうさん
また木野村たちと一緒に委員長をすることになったが、委員長といっても関わりは少ないので平穏な日常を過ごせている。
ところで3年生になると理科と社会が増える。国語や算数は前世と全く同じだったので楽勝だったが、理科と社会は少し前世とは違ってくるので勉強しなくてはならない。
ゲームの世界はすごく狭い。期間だって3年だけだ。そのゲームに出てきたものは前世と何ら変わりはない。が、ゲームに出てきていないのは多少変わってくる。
例えばモンシロチョウなんかが良い例だ。モンシロチョウはゲームに出てこない。そして、この世界にモンシロチョウなんて蝶は存在しない。私の世界でのモンシロチョウは別の固有名詞を与えられていた。土地だってそうだ。ゲームでは土地の名前なんて出てこない。この世界の地図を見てみると土地の名前がところどころ変わっているのだ。星の名前も、花の名前も変わっているものがある。だから、理科と社会は覚えなおさなきゃならないことが多々ある。頑張らねば。
とはいっても、根本的なものが全て変わったわけではないので然程難しくはない。日本列島は私の記憶通りの形をしているし、県名は違うが県境は記憶通り。モンシロチョウだって学名が違うだけで分類は変わらなかった。少しだけ、ほんの少しだけ前世のときとのズレがあるだけ。
しかし、このズレのおかげで私は色々なことを割り切れたのだから感謝すべきなのだろう。
さてさて、平穏に過ごしていれば時が過ぎるのは早い。もうすぐ体育祭だ。今年は兄弟と組が離れてしまったので目立たずに過ごそうと思う。リレーにだけは絶対に出ない。
「無理でしょ」
「なんでさ」
先生に頼まれた雑用をこなしていると一緒に作業をしていた秋田くんに否定された。解せぬ。
「去年も言ってたよね」
「去年は弟が同じ組だったからね。今年は違うからリレー出ない」
「ふーん? ちなみに50mのタイムは?」
「クラスの女子の中で1番」
「無理じゃん」
だって体力測定のほうが組分けより先だし。仕方ないじゃないか。また圭や兄と同じ組になったら全力で挑むつもりだったし。しかしまぁリレーに選ばれるのは確実か。なら。
「体育祭前日に怪我でもするか」
「何が委員長をそこまで動かすのさ」
「目立ちたくないという願い」
「委員長……」
なんでそんな残念なものを見る目で私を見るんだ。
「怪我したら体育祭自体に出れないじゃん」
「たしかに」
それでは少しつまらない。怪我はなしの方向でいこう。他に何か良い案はないかな。
結局、リレーに出ないための良い案など出なかったので私はリレーに出ることになった。辛い。目立ちたく無い。家で兄にそうもらせば「もう手遅れだと思う」と言われた。確かに。上の学年は皆一昨年と去年を知ってるもんね。もう今更か。赤坂にも普通に目をつけられてるし、今年は逃げずに堂々としてみようか。




