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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
32/232

さんじゅういち 2年学園祭 3

 学園祭二日目、少し曇っているが過ごしやすい気候の中、ワイワイと学園中が賑わっている。


 そんな中、私は迷子になっていた。



 兄弟と一宮さんの四人でまわっていたのだが、見事にはぐれてしまった。

 油断してた。去年は迷子にならなかったし、今年も大丈夫だと……。ていうかここどこだ。学園は広いからなぁ。初等部校舎付近しか詳しくわからないんだよな。

 劇は一日目だけなので二日目は一日フリー。兄と圭、一宮さんもフリーだったので四人で回ることにした。そして一日目以上の人混みに揉まれはぐれた、と。ついでに私は携帯を携帯していない。カメラならあるけど。あと財布と買った食べ物たち。うーん、動き回るのもあれだし、人の少ないところでジッとしておくかな。

 そうと決まれば人ごみから抜け、隅っこの方へ移動する。さて、兄たちは見つけてくれるだろうか。最終手段は校内放送かな。

 買ったわたあめを食べながら行き交う人々を眺めていると少し外れたところで空を見上げている木野村を見付けた。何してるんだろう。同じように空を見上げてみるが、いつもと変わらぬ空だ。曇っているので白い。

 目線を木野村に戻せば先程とは打って変わりキョロキョロと周りを見回し始めた。何か探してるのか、それとも迷子か。


「……………………木野村さん」

「あら、間切さん」


 キョロキョロしている木野村の顔が不安そうに歪められたので思わず声をかける。声をかけられ、私に気がついた木野村は少し安心したように笑った。


「さっきからキョロキョロしてるけど、どうしたの?」

「少し人を探してましたの」

「人?」

「えぇ、両親なんですけど。さっきまで一緒にいたのですが…急に消えてしまって」

 それ、たぶん君が逸れただけだ。

「そうなんだ」

 迷子なんだね、という言葉をなんとか飲みこんでそう返す。

「間切さんは?」

「私? 私は迷子」

「堂々としてますわね」

「迷子になっちゃったものは仕方ないよね」

 別に好きで迷子になったわけではないが、なってしまったものは仕方ない。それにこの外見年齢なら笑って済まされる。

「それにしても…沢山買いましたわね」

「いっぱい売ってたからつい」

 木野村の目線の先にあるのは私が買った食べ物たちだ。やきそば、わたあめ、サンドイッチ等等。どれも美味しそうに見えるんだよね。思わず買っちゃった。

「その今食べているものはなんです?」

「わたあめ」

「あの雲の欠片から出来ているという!?」

 メルヘンだなぁ。これの原材料ただのザラメだよ。

 目をキラキラと輝かせている木野村の夢を壊すなんてことできないので言わないけど。

「……そういえば間違えてもう一つ買っちゃったんだよね。よかったら貰ってくれない?」

「え!?」

 袋に入ったわたあめを差し出すと木野村は私とわたあめを交互に見てくる。私がわたあめ好きだから買ったんだけど、まぁいい。

「いいんですか……?」

「うん」

「ではいただきます」

 木野村が壊れ物を扱うかのようにわたあめを受け取る。凄く嬉しそうだ。

 木野村が嬉しそうにわたあめを見つめていると遠くから「かりん」と呼ぶ声が聞こえてきた。

「お母様だわ」

「そうなの?」

「行かないと。……間切さん、これのお礼がしたいので、あの、メアドの交換してくれませんか? 連絡取りたいので」

「今携帯持ってないや」

「携帯を携帯してくださいな」

 それ、赤坂にも言われたな。なんかごめん。

 木野村は残念そうにしながら親のもとへと歩いていった。




「波留ちゃん見ーっけ」

「一宮さん」

 木野村が去ったすぐあと、私の目の前に一宮さんが現れた。私を見付けた一宮さんはケータイで何かを打っていた。たぶん兄へのメールだろう。

「わたあめ美味しい?」

「はい」

「それザラメからできてるんだよね? やっぱり甘いの?」

「食べたことないんですか?」

「ないかなぁ」

「ひとくち食べてみます?」

「いいの?」

「どうぞ」

 まだ半分以上残っているわたあめを渡せば一宮さんは興味深そうにそれをくるくる回してみていた。食べないのかな。

 暫くくるくる回したあと、一宮さんはわたあめをひとくち食べた。

「すぐ溶けちゃった。それに凄く甘い」

「ザラメですからね」

「でもたまにはこういうのもいいね。はい、ありがとう」

 わたあめが私の手元に戻ってくる。うまうま。


「はーるー?」

「ヒィッ!?」


 私がわたあめを食べていると背後から肩を捕まれた。そして後ろからは怒っている兄の気配がする。

「お姉ちゃん探したー」

「ごめん」

「なんで波留は目を離すとすぐにいなくなるんだろうねぇ?」

「すみませんでした」


 いや、悪気はないんだよ。ただ気がついたらはぐれちゃっているだけで、わざとでは無いんだ。一宮さん、笑ってないで助けて。兄が怖い。



 その後は一宮さんにガッチリと手を繋がれていたのもあって迷子にならずに学園祭を満喫できた。有村さんや茜さんのクラスにもお邪魔できたので満足。有村さんはホットケーキ奢ってくれた。有村さんエプロン似合うね。そして茜さんのクラスは男装女装カフェで、男装した茜さんに接待された。イケメンだった。

 

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