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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
30/232

にじゅうく 2年学園祭 1

 夏休みが終わり、今日から二学期だ。二学期といえば学園祭。うちのクラスは今年も劇をやることになった。演目は赤ずきん。この演目を決めるとき、候補に「三国志」「源氏物語」が挙がっていた。誰だこれ挙げたの。できるわけ無いだろ。難しすぎるわ。絶対に小学生がやるものではないし。担任もこの2つには微妙な顔をしていた。というかよく源氏物語とか知ってたな。


「と、いうわけで今年もよろしくお願いします」

「こっちこそよろしくー!」

「おろしてください有村さん」


 今年も演劇部のお世話になるので挨拶に行けば有村さんが出迎えてくれた。今年の部長は有村さんだ。私は入った瞬間高い高いされた。慣れたものだ。


「今年もよろしくね、間切ちゃん」

「お世話になります」


 茜さんにも挨拶をすると茜さんは頭をなでてきた。姉妹揃って頭撫でるの好きですね。


 今日は顔合わせだけだ。去年は3人しかいなかったが今年は5人いる。ちゃんと役者側もいるんだ。それでも少ないけど。仕方ないね。


「そういえば今年はマサのクラスも演劇やるらしいの」

「みたいですね。茜さんそちらに行かなくていいのですか?」

「マサに来るなーって言われちゃって」

 恥ずかしいのかな。

 困ったように笑う茜さんはそこまで本気で困っているようには見えない。おそらく本気で拒絶されてはいないとわかっているのだろう。流石お姉さん。


「でも、マサに会いたいからちょっと行ってくるね! 間切ちゃんちょっと待ってて!」

 そう言い残して茜さんは教室から出ていった。それと入れ替わるように秋田くんと話していた有村さんがこちらに来る。

「あれ? 辻村は?」

「弟君に会いに行きました」

「……」

「仲良さそうで何よりですね」

「いつぐらいに戻ってくると思う?」

「さぁ」

 暫く戻ってこない気がする。


「間切ちゃん、もう話し合いは終わったし帰っても良いよ? 辻村には言っておくし」

「いえ、待ちます」

 待っててって言われたしね。

「そっか。じゃあ帰りは送ってくよ。取り敢えずお菓子食べる?」

 私の返答を聞いた有村さんはポケットからクッキーを取り出した。もしかして常備しているのだろうか。ありがたく貰おう。

 私と茜さんが雑談している間に他の子は帰ってしまったらしく、教室には私と有村さんしかいない。そしてクッキーを手に取った私を有村さんは当然の様に抱き上げた。


「美味しい?」

「美味しいです」

「それはよかった」



「有村先輩見てください! うちの弟天使!」


 有村さんとほのぼのしていたら教室の扉が開かれて茜さんが入ってきた。そして茜さんの腕の中には辻村弟がいる。


「去年の子の衣装!すごく似合ってるでしょう!?」


 辻村弟が着ている衣装はドレスである。

 茜さんに抱き上げられている辻村弟の顔は死んでいる。それもそうだ。男子なのにドレス着ているんだから。いやでも似合ってるよ。辻村弟可愛い顔してるもんね。うん。そんな気落ちしなくていいんじゃないかな。チラリと上を見れば有村さんが困ったように笑っていた。


「姉さん下ろして……」

「下ろしたら逃げるじゃない!」

 今更だけど2年生の男の子を持ち上げ続けられる茜さんって結構腕力あるのでは?

「逃げないから……戻っても皆に遊ばれるだけだし」

「そう?」

 茜さんは辻村が逃げないと知ると辻村を床に下ろした。ついでに有村さんも私を下に下ろす。ふむ。写真撮っておこう。



「……間切さん……?」

 やべ、気付かれた。

 ドレスを身にまとった辻村がこちらに近づいてくる。顔が般若のようだ。折角きれいな顔してるのに勿体無いな。


「何撮ってるの?」

「教室の写真」

「へぇ〜? 僕にも見せてくれない?」

「……ん」

「………………僕じゃん! 何撮ってるの!」

「いはいいはい」

 写真のデータを見た辻村は両手で私の両頬を抓ってきた。とても痛い。似合ってるしいいと思うんだけどな。まぁでも本人の許可無く取るのは駄目だよな。消しておこう。次はバレないように撮ろう。

「ちゃんと消した?」

「消したよ」

 カメラを覗き込んで辻村がデータの確認をする。消したってば。




「まさー? あ、いた。間切もいる」


 王子の衣装と思しきものを身にまとった赤坂登場である。辻村とセットかな?


「夏樹……なにそれ」

「お前が連れ去られたあと遊ばれた。似合う?」

「僕はドレスなのに……なんで」

「似合うからじゃないか?」

 二人とも似合ってると思う。

 二人が会話に夢中になっているうちに少し離れた位置、有村さんのところへ行き、カメラのシャッターをきる。よし、気付かれずに撮れた。


「二人とも可愛いなー」

「そうですね」

「間切ちゃんも着てみる?」

「何をですか?」

「ドレス」

「絶対に着ません」

 それなら赤坂に着せて欲しい。整った顔立ちしてるからきっと似合う。それにまだ体型に男女の差があまりない年だ。今のうちに着せてみたい。

 ……有村さんとか意外と似合うんじゃないだろうか。逆ナンされるくらい顔は整っているし、体型をカバーできるドレスを選んで化粧して…見てみたいな。着てくれないかな。


「間切ちゃん」

「はい?」


 有村さんのドレス姿を想像していると茜さんにコッソリと話しかけられた。なんだなんだ。


「マサのドレス姿の写真、ちょうだい?」



 あぁ、そういやこの人ブラコンだったな。



 写真は辻村弟が可愛そうなので断っておいた。

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