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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
28/232

にじゅうなな 2年夏休み 2


「やぁ」


 公園でボッチを満喫していたら目の前に鳩を引き連れたお兄さんが立っていた。


 去年のあの人だ。っていうか相変わらず鳩多い。この人餌だと思われてんじゃないだろうか。


「一年ぶりかな?」

「そうなりますね」

「飴いる?」

「わーい」

 私の隣に腰掛けた鳩のお兄さんが以前と同じように飴をくれる。今回は何味だろうか。


『はちのこ』


「………??」

 はちのこ? え、あの、蜂の幼虫の……?

「奇抜な味のものって買いたくなるよねぇ」

「ソウデスカ……」

 にしてもこれは奇抜すぎないか? 食べるのが怖いので鞄にしまっておこう。


「そういえばお兄さんはなんでこの公園に?」

「勉強が嫌で逃げてきたんだよ」

「勉強嫌いなんですか?」

 たしか去年も受験勉強から逃げてきてたよね?

「嫌いではないよ。でも勉強より外でのんびりしてる方が好きかなぁ。君は勉強好き?」

「好きですね。色んな事学ぶのは楽しいです」

「そっか。まだ幼いのに偉いねぇ」

 優しく褒められて、頭を撫でられて思わず和む。ふむ。なんかこの人いいな。頭のなで方とか素晴らしい。

 それから少しの間、お兄さんと世間話をした。お兄さんが飼っている犬の話とか。まだ子犬で可愛いらしい。私も犬とか飼ってみたいな。


 帰り際にもらった飴は刺し身味だった。なんの刺し身だろうか。




「ただいまー」

「おかえり波留ちゃん」

「一宮さん!」

「お邪魔してるよー」


 家に帰ると一宮さんが出迎えてくれた。



 何故かエプロン姿で。



 これはあれだろうか。「ご飯にする? お風呂にする? それとも私?」みたいなノリなんだろうか。


「ん? あぁ、これね。梓がお菓子作りたいっていうから、手伝ってるんだよ」

「お菓子」

「もうすぐ出来上がるから手洗っておいで」

「はーい」


 兄がお菓子作り。どうしよう想像できない。兄と一緒にご飯を作ることはあるがお菓子を作ったことはない。どんなものが出来上がるんだろうか。

 手を洗ってキッチンを覗き込むとエプロンを身につけている兄が立っていた。勿論隣には一宮さんがいる。写真撮っておこう。


「波留、手ぇ洗ったのか?」

「洗った…………よ……え、返り血?」


 私に気が付き、近づいてきた兄のエプロンは真っ赤に染まっていた。何事。お菓子作るのになんでそんな赤くなるの? 魚でも捌いたの? 魚使うお菓子作ったの? スターゲイジパイ?


「ケチャップとタバスコだけど」

「兄さんは一体何を作ってたの?」

「フォンダンショコラ」

 私の記憶ではフォンダンショコラにはケチャップもタバスコも使わなかったはずだ。

「間違えて零しちゃっただけだから安心して。フォンダンショコラにはどっちも入ってないよ」

「良かった」

 フォンダンショコラにタバスコなんて入れたら大惨事だ。なんでケチャップとタバスコをエプロンに零したのかは気になるが、食べ物に混入していないならいい。


 もう夕飯の時間だったので一宮さんと一緒に四人で夕飯を食べて、デザートとしてフォンダンショコラを食べた。美味しかった。



 食後、圭を習い事に送り出したあと、鳩のお兄さんのことを話すと一宮さんの顔色が変わった。

「え!? 知らないお兄さんから飴貰ったの?!」

「去年も貰いました。今年はこの2種類です。食べます?」

「はちのこと刺し身……美味しいのか? これ」

「さぁ」

「梓! ……波留ちゃんあのね、この世の中には危ない人が沢山いるんだよ? ロリコンなんてのもいるからね、知らない人にはついて行っちゃダメだし、知らない人からものをもらうのも駄目なんだよ?」

「そうですね?」

「その鳩のお兄さんだって危ない人かもよ?」

「大丈夫だと思うけど。去年もらった飴食べたけど何もなかったし」

「梓も食べたの!?」

「あんまり美味しくなかったな」

「兄さん刺し身味食べてみない?」

「いやだ」


「二人ともそこに正座」


 その後、一宮さんに説教され、この世の危険について説かれた。正座きっつい。圭が習い事でいないことは救いだったな。こんな姿見せられない。

 説教が終わる頃には兄も私も足が痺れて立てなくなっていた。

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