にじゅうさん
季節が巡るのは早いもので、もう春がやってきて、圭が初等部に入学してきた。
ここの初等部の受験には筆記試験がある。
私と兄で圭の勉強を見ていたのだが圭に「足し算ってなに?」と聞かれたときは困った。思わず足し算の定義を調べてしまったくらいだ。あれだね、小さい子に勉強を教えるのって難しいね。
圭は勉強したかいあってちゃんと私達の通う学園へと入学ができた。圭の制服姿は可愛かった。家族総出の撮影大会を開催したくらいだ。私の弟は本当に可愛い。
2年生になる時にはクラス替えがない。だからクラスメイトも変わらない。そして委員長、副委員長も。
私と秋田くんは先生に頼まれ、放課後の教室でよくわからないプリントをホッチキスで止めていっていた。作業をしながら今年の目標について二人で話す。
とりあえず私は去年、何だかんだ目立っていた気がするし、あの三人共結構関わってしまったので今年は目立たず、脇役を極めようと思う。
「なので今年の体育祭のリレーにはでない」
「あれ体力測定の結果で強制的に決められるよね? どうやって逃れるつもりなの委員長」
「本気を出さずに走ればいい」
「そんな上手く行くかなぁ」
「いけるいける」
「委員長はどっか抜けてるし、たぶん無理だと思うんだけどなぁ」
失礼な。
秋田くんに染み付いてしまった自分のイメージを払拭するためにも絶対に目立たないようにしよう。
「そういえば今年は早めに体育祭の組分けがでたな」
兄がそういったのは次の日に身体測定、体力測定を控えた日の夜、夕食後に三人でダラダラしていた時のことだった。
「何でこんな早くに」
「校長の気まぐれ」
何してんだ校長。
まぁ、特に問題ないけどね。それよりも明日の体力測定が楽しみだ。明日の体力測定の準備は万全にしてある。小学二年生女子の50mの平均タイムも調べたし、その平均に合わせるための練習もした。これならきっと私がリレーの選手になることはない。秋田くんを見返してやるのだ。
「俺が聞いたのだと……三人全員赤組だったな」
なんという偶然。凄いな。
「お兄ちゃんたちと一緒!?」
「一緒だな」
兄の言葉を聞いた圭が嬉しそうに兄に近づく。可愛い。私の弟凄く可愛い。
「お姉ちゃん!」
「ん?」
「絶対優勝しようね!」
弟のために全力で体育祭に臨もう。
こちらをむいて満面の笑みを浮かべる圭を見てそう誓った。
50mのタイムは去年よりも短くなったし、秋田くんには呆れられた。仕方ないじゃないか、可愛い弟が優勝目指しちゃってるんだから。弟のためなら多少目立ってしまっても吝かではない。




