三十話 1年夏休み9
会場と言う名の辻村家に着くとどうやら一足先に来ていたらしい辻村と赤坂がいた。木野村と一緒に車を降りれば2人の視線がこちらを向く。私達を視界に捉えた瞬間、赤坂が口を開いた。
「間切が久々に女子してる!」
「私は一応もとから女子だけどね」
開口一番になんてことをいうんだこの子は。
「いやだって間切は間切だし……」
「君の中で私の性別は相変わらず間切なんだね」
別に構わないが。
赤坂は私を上から下まで見てからまた口を開く。
「ちゃんと女子だな!」
「君は私に対する褒め言葉がそれしかないのかな」
別に構わないが。女子だな、はただの事実である。私は生まれてこの方ずっと生物学上女子。
「木野村も綺麗だな。今日は髪を上げてるのか!」
「ありがとうございます」
言葉自体は短いが赤坂に褒められた木野村は頬を染めて微笑んでいる。恋する乙女だな。見てるぶんには目の保養。
「間切さん」
「こんばんは辻村くん。相変わらず美人だね」
「びじ…………ありがとう……」
私の隣に来た辻村は何故か肩を落とした。折角の美人なんだから笑ってくれ。まぁ、写真は撮るけど。はいちーず。
私が写真を撮っていると辻村が顔を上げる。
「今日も可愛いね間切さん」
「夏鈴ちゃんが頑張ってくれたんだ。化粧で結構変わるものだね」
「名前で呼ぶようになったんだ?」
「お友達なんで」
「そう」
私が答えると辻村は少し嬉しそうに笑った。たぶん木野村に友達ができて嬉しいんだろう。この三人、普通の友達少ないみたいだし。そういや赤坂と辻村は友達いるのか? いやでも一応クラスメイトと話している姿は見かける……一応友人はいるんだろう。たぶん。
思案する私の横で笑っていた辻村が突然真面目な顔をした。
「…………僕のことも名前で呼んでみない?」
「……」
真面目な顔で突然何を言っているんだろう。……まぁ今は他人がいないので特に問題はないか。
「マサと雅直、どっちが良い?」
「じゃあマサ」
「マサ」
「波留?」
「……」
「……」
互いの名前を呼びあった私達は無言で見つめ合い、そして未だ照れている木野村と何やら楽しそうな赤坂へと視線を移した。
「特に何も感じなかった」
「なんでだろうね」
今まで名字呼びだったのが名前呼びになったら何か特別な感じがすると思ったがそんなことはなかった。特に違和感もない。これは私達が枯れているんだろうか。老成と言ったほうが聞こえはいいな。今度秋田くんとも試そう。まぁ精神年齢三十路超えだから仕方ない……。
青春しているように見える赤坂と木野村の二人をしばらくの間辻村と眺め、適度な所で中へと入る。凄まじい広さの家の中を歩いて会場へつけば兄弟がいた。着飾った兄弟が私を見つけ駆け寄ってきたのでそれを写真に収める。弟可愛い。
「姉さん可愛い!!」
「ありがとう。圭も格好良いよ、似合ってる。兄さんもいつにも増して格好良いね」
「ありがとう。後で写真を撮ろう。母さんたちも見たいだろうから」
そうだね。
私が兄弟と合流した後、辻村は準備などを手伝うらしくその場を去ってしまったので残された五人と、私達の少し後にやってきた東雲先輩と談笑しているとパーティーが始まり、有村さんと千裕さんが登場した。千裕さんが眩しいくらい美人だった。




