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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
高校生編
213/232

エイプリルフール3

弟視点

「あっ! 噂の!」


 クラスメイトの女子が声を上げる。その子は窓から外を覗いていて、隣の子と何かを話していた。


「あの人だよね! 高等部で何故か男になっちゃった生徒会の人!」

「たぶん! 間切くん! そうだよね!?」


 どこまで事情が筒抜けになっているんだろう。

 そんな疑問をいだきながら自分も窓の外を見る。次の時間は体育なのか生徒が外にいた。その中には姉さんもいる。男子のグループに混ざっているから、男子と同じ内容をやるんだろう。


「……そうだね」


 噂の間切姉で間違いないといえばクラスメイトが窓の近くに集まってきた。皆見たいらしい。僕は幸い窓際の席だから席に座ったまま外を見る。


 恐らく秋田先輩と話しているんであろう姉さんの短くなった髪が風に吹かれてサラサラと揺れる。ジャージも兄から借りたのか、少しダボついているようだ。


「結構格好いいよね!」

「ねー!」


 なんでこの学校の生徒は女子生徒が男になったというのにあっさり受け止めているんだろう。不思議だ。


 サッカーをやるらしい。チーム分けがされたのか、男子がふた手に別れる。姉さんのチームには篠崎先輩も、辻村先輩も、赤坂先輩も、秋田先輩もいる。姉さんは相変わらず無表情だ。


 そろそろ授業が始まるなーなんて思いながら外を見ていると姉さんの隣りに居た秋田先輩がこちらを見た。たぶん、目があった。

 驚く僕を他所に秋田先輩は姉さんに声をかける。すると姉さんもこちらを見上げた。目があったので小さく手を振れば姉さんも振り返してくれた。思わず笑みが溢れる。


 その後、鐘がなって授業が始まったあとも僕はチラチラと外を見た。姉さんは球技が苦手だ。しかもいつもと違う身体でうまく行くわけもなく、最初の方は転んだり空振りしたりしていた。

 が、適応能力が無駄に高い姉さんはすぐ人並みに動けるようになっていた。驚きだよ。





 果てには怪我した男子生徒をお姫様抱っこで保健室の方へ連れて行っていた。なんだかんだ鍛えているから、いつもより筋力のある今なら易易持ち上げられただろう。何してるの姉さん。




「ダボついたジャージ可愛くない? 萌え袖」

「最初の方めっちゃ転んでた〜! 可愛いっ」

「でも最後の方かっこよかったね!」


 授業が終わったあと、僕の前の席の子と、その友達がそんなことを話していた。聞かなかったことにしよう。それがいい。

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