二十八話 一年夏休み7
「お迎えに上がりました!」
「………………………………徒歩でよかったのに」
パーティー当日、木野村は車で家の前に来ていた。そこまで離れていないのだから徒歩でも行けるはずなのだが。
「だって私じゃ波留ちゃん守れませんし」
「自衛するから問題ない」
「スタンガン仕舞ってください」
大丈夫だとスタンガンを取り出したらしまわされた上に流れるように車に乗せられた。まぁリムジンとか黒塗りの車じゃないだけマシか。
「今日は髪巻きますか?」
「おまかせでお願いできる? 私そういうのよくわからないから」
「任せてください!」
ぱぁっと眩しい笑顔をこちらに向ける木野村。美人ですね。
「髪留めとかは貸してもらえるんだっけ?」
「勿論!! 波留ちゃん! 目一杯可愛くなって皆さんを驚かせましょうね!」
「いや、今回のパーティーの主役は千裕さんと有村さんだからそこまでしなくて良いよ……」
「それもそうですね……」
私の言葉に先ほどとは打って変わってしょんぼりとしてしまう木野村。どうしたものか。
「でも波留ちゃんを着飾りたいです……可愛くしたい……」
「……まぁまた機会はあるだろうし、その時好きにしたら良いよ」
「約束ですよ!?」
「うん」
ところで私のようなモブでも化粧とかしたら多少は可愛くなるんだろうか。モブはモブな気がするし無理じゃないか? いやでも両親兄弟みんな顔いいし着飾れば私もワンちゃん………………ないな。うん。どうあがいても私はそのへんに転がる石ころレベルだ。というか目立ちたくないのでそのレベルで良い。漫画とかだと顔すら描かれないモブレベルで。こう、全校集会の時とかに描かれる大多数の中の一人で。
「お花刺します?」
「それ頭から血出ない?」
「出ませんよ!? あぁでも今日の服装にはこっちの方が……」
「女子だなぁ……」
家に着くなり様々な髪飾りを前にウンウン唸りだす木野村。うん、女子だ。化粧道具も大量にあるし凄いな。
「ではささっと髪を弄りましょう!」
「髪飾りは決まった?」
「はいっ」
片手に櫛を持つ木野村は楽しそうである。彼女のもう片方の手には……なんだあれ。なんか綺麗なやつがある。駄目だ私の知識が乏しい。




