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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
21/232

にじゅう 1年学園祭 4

 ライトに照らされた舞台上でクラスメイトが物語を紡いでいる。


 のを、私は客席で見ている。左右を辻村姉妹に挟まれ、何故か有村さんの膝の上に乗せられた状態で。私を膝の上に乗せる意味とは。ちらりと三人を見やれば各々真剣な顔つきで舞台を見ていた。

 舞台上のクラスメイトは子供にしては演技がうまいのではないのだろうか。私にはわからないけれども。とりあえず衣装すごい。

 ストーリーが一通り終わると演劇部の方々がクラスメイトに近づき何か話している。アドバイスしてくれているのだろう。


「……」

「有村さん?」


 演劇が終わったというのに真面目な顔を崩さない有村さんに声をかけると彼は私を上から見下ろしてきた。


「間切ちゃん、ちょっと俺のことお兄ちゃんって呼んでくれない?」


 何を言っているんだこの人は。



「………………お兄ちゃん?」

 期待に満ちた眼差しに負けて呼び掛ければ有村さんは満足したように笑顔を見せた。何なんだ一体。

「間切ちゃん、私も」

 そして何で貴女もノッてるんですか千裕さん。いいけどさ。

「お姉ちゃん?」

「私は?」

「茜お姉ちゃん」

 二人も満足したように笑顔を見せ、頷きあっていた。うん。何がなんだかわからないけど満足していただけたようで何よりです。


「やっぱりお姉ちゃん呼びはいいね!」

「かわいいわよね。お姉様呼びも捨てがたいけれど」

「マサは姉さんって呼ぶようになっちゃったし……反抗期かな?」

 辻村弟の反抗期早いし可愛いな?

 つんつんと私の頬をつつきながら会話を続ける二人の話題はもっぱら辻村弟についてである。弟好きだね。ブラコンかな。




「姉さんたち、早く帰ろ」



 噂をすれば影が射す。気がつけば私達の近くに辻村弟が来ていた。君いつきたの?

「あ、そうだったわね」

「今日は早く帰る日だった! 忘れてた!」

「すぐ準備してくるからマサはここで待ってて」


 弟ここに置いていくの? まじで?


 私の戸惑いをよそに二人はさっそうと去って行ってしまった。


「間切さん」

「はい?」

「……随分と、姉さんたちに気にいられてるね」


 いや、たぶんあの人たち小さい子ならみんな大好きだと思う。早苗ちゃんとかにも似たような態度取ってるし。ていうかなんか言葉に棘あるね? なんでそんな探るような目をするの?

 …………あ、そうか、なるほど。


「お姉ちゃんって呼んであげると二人とも喜ぶよ」

「……」

「別に君のお姉さんを取ったりしないよ」

「……」

「いはい」

 辻村弟に思いっきり頬をつねられた。痛い。図星か? 図星なのか?

 私の頬をつねる辻村弟の顔は真っ赤である。図星なんだね。可愛い奴め。しかし頬は痛いのでやめてほしい。

 結局、辻村弟の行動は辻村姉妹が戻ってくるまで続いた。頬が痛い。有村さんは生温かい目で見てないで助けてくれても良かったんじゃないだろうか。






 翌日の昼休みに辻村弟に裏庭に呼び出され、また頬をつねられた。どうやら昨日は姉妹に構い倒されたらしい。恥ずかしそうにしながらも嬉しそうだった。私を呼び出した上に頬をつねる意味はわからないけれども。


 そして放課後、また演劇部へお邪魔していると辻村姉妹が満面の笑みで私に駆け寄ってきた。

「間切ちゃん! 昨日マサが久しぶりにお姉ちゃんって呼んでくれたの!」

「良かったですね」

「ありがとう間切ちゃん。お菓子食べる?」

「私は何もしてません。お菓子食べます」

「ふふ、いっぱい食べていいのよ」

 お菓子はチョコレートでした。美味しかった。

 辻村姉妹は私がお菓子を食べている間ずっと辻村弟について語ってくれた。弟好きですね。仲が良さそうで何よりです。お菓子美味しい。あー、私も兄弟と遊びたいなー。


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