二十一話 一年夏休み初日
『ちょっと電話していい?』
夏休み初日の昼過ぎ、辻村からそんなメールが届いた。特に用事もないので了承のメールを返せば直ぐに携帯が鳴った。
「もしもし」
『いきなりごめんね。少し頼みたいことがあって……』
「どうしたの?」
『間切さん、アップルパイ作れる?』
唐突過ぎてびっくりする。
「作れるけど……」
『作り方を教えて欲しいんだ』
「何故?」
『姉さんが僕が作ったのを食べたいって……』
「君は相変わらずお姉さんに弱いなぁ」
『うぐ……』
「いいよ。私は基本暇だけど、君たちはいつ空いてる?」
『ありがとう。日程は後でメールで送るよ』
通話はそれで終わり、直ぐにメールで空いている日にちが送られてきた。一番早い日を指定しておく。ところでもしかして私は彼の家に行くことになるのだろうか。
そう疑問を感じてメールを送れば、できればうちに来てほしいと言われた。ふむ。
「というわけで辻村くんの家に行くことになった」
「そうか。楽しんでおいで」
「姉さん?」
弟が怖い。
一応兄弟にそのことを報告したら兄は無表情だが優しくそう言ってくれた。が、弟は笑顔で怒った。怖い。
「ねえさん?」
「辻村くんだし……」
ボソリと言えばおとうとの顔から表情が抜け落ちた。怖い。
「うん。そうだね。僕も辻村先輩や山内くんは常識があるから大丈夫だとは思うよ?」
「でも姉さんは絶対変な人にもホイホイついていくじゃないか!!」
弟の中で私は一体どんな人間とされているんだろう。まさか3歳児だと思われていないだろうな。
「圭……? さすがにそれは……」
「だって姉さんだよ!?」
「とても悲しい」
姉としての威厳がゼロな気がする。
「圭、あのな? たしかに波留は友人たちには警戒心ゼロだし男女間の距離も異常だしちょっと抜けてるところもあるけど、さすがに……」
「言っとくけど、兄さんも結構抜けてるからね」
「えっ……」
嘘だろ? と兄にしては珍しく顔に出ている。兄はそんなに抜けているだろうか。……うん。わからない。ところでそろそろ足が痺れてきた。やばい。
「今回は他にも人がいるみたいだからいいけど……」
「あの、圭……そろそろ足が……」
「だめ」
「……」
最近弟が私に厳しい。
結局私は兄から哀れみの視線を受けながら夕飯時までそのままでいることになった。弟はすごく楽しそうだった。お姉ちゃん君のことがわからなくなってきたよ。




