十七話
期末テストが終わり、テストという重圧から解放された生徒たちが浮き足立っている。
「テストどうだった?」
「普通かなぁ」
高校1年の範囲ならまだ問題はない。ただし英語と社会科目は別だが。あれは前世の記憶関係なしに苦手だ。
「俺中間で少し順位落ちてたんだよね……今回どうだろ。ある程度はいけると思うけど」
「外部生入ってきたからね。外部生は皆凄いから」
この学校は殆どの生徒が初等部からの持ち上がりであり、中等部、高等部から入ってくる人は極わずか。10人いるかいないかだ。
しかし設備や先生の質が良いためこの学校に入ろうとする学生が多い上、高い学費も上位数名に入れば免除されるので、皆それを目指して勉強してくる。入学してきた数少ない外部生はそんな人たちの中の上位。つまりは成績が異常に良いのだ。だから中等部、高等部に上がって1回目の定期試験では多くの内部生の成績が落ちる。
「でも本当、成績の張り出しがなくて良かったよね」
「それは本当にそう思う。ありがたい」
成績の張り出しは学校全体で何か規定があるわけではなく、その学年を受け持つ先生たちによって決められる。なので他の学年では上位10名を張り出していたり、各科目の上位を張り出していたりする。
だからこそ、高等部に上がって初めての定期試験のときは結果が張り出されるんじゃないかとドキドキしたものだ。幸いなことに私は順位が落ちていなかったので上位10名だけの張り出しでも名前が載る。避けられてよかった。
「1位の人って何点取ってるんだろうね?」
「うわびっくりした!!!」
「槇原さん、いきなり背後に立つね」
席について秋田くんと話していたら立っていた秋田くんの背後から突然槇原がニュッと生えてきた。びっくり。
「ごめんごめん! いやぁ、ちょっと気になってね〜」
「まぁ張り出しがないから、本人に聞かないとわからないよな〜」
「そう! 1位が辻村くんって聞いたんだけど、本当?」
「らしいよ」
「聞いてくる!」
私の返事を聞いた槇原はくるっと振り返り、自分の席に座って赤坂たちと話している辻村の方へと去っていった。
「行動早いな」
「槇原さんって結構グイグイいくよね。目をつけられなきゃいいけど……ごめんつけられてたね。そして波留さん巻き込まれてたね」
「……」
「すごく目立ってたね。同情する」
「次は君だろうな。そうでなくとも道連れにする」
「やめて! 怖いこと言わないで! もしかして笑った事まだ根に持ってる!?」
「聞いてきた〜」
会話を続けている私達のもとに槇原が戻ってくる。本当に聞いてきたのか。
「全教科満点だったって!」
化物かよ。何科目あると思ってるんだ。まだ文理で別れてないから、10以上あるんだぞ。
「いやぁ、凄いねぇ〜」
「全科目満点とか取ってみたいな〜」
「そだね……」
取ってみたいけど、ケアレスミスなんかもあるから難しいだろうな。特に数学。流石ゲームの攻略キャラ。スペックが高い。
「僕としては、2位の人が誰か凄く気になるけどね」
なぜ、さっきまで自分の席に座っていたはずの辻村の声が真後ろから聞こえるのか。




