十二話 1年体育祭 3
「間切って屋上好きだな?」
「体育祭の時に屋上に来る人っていないから」
「そっか」
昼休み、ご飯を家族で食べてから私はまた鬼ごっこを始めた。鬼はもちろん赤坂だ。
マンネリ化している気がしなくもないが、全力で逃げる。いや、笑顔で、凄まじい勢いで自分を追ってくる人間がいたら誰でも恐怖を抱くと思う。
「俺気がついたんだけどさ」
「ん?」
屋上からグラウンドを眺める私の隣に立った赤坂はじっと私を見つめる。なんだ?
「間切、小さくなったな」
遠慮なく足を踏んでやった。
「君が縦に伸びただけだ」
足を踏まれ、痛みに悶える赤坂を見下ろしながら告げる。断じて私が小さくなったわけではない。これでも女子の平均はある。
痛みで悶える赤坂は珍しいので写真を撮っておいた。
「いたい……!!」
「そうか」
「いや、だって間切小さいじゃん! 横向いても視線合わないし!」
「なるほどもう一度踏まれたいと。君に被虐願望があったとは驚きだ」
「ごめんなさい」
真顔で告げれば赤坂からは謝罪が返ってきた。よろしい。
痛みが落ち着いてきたらしい赤坂はその場に座り込む。ついでに私も座った。
「でも、そっかー。間切にもコンプレックスとかあったんだな!」
「君は私をなんだと思っているのか」
「え、完璧超人」
最近、私の周りの人間が私をどう見てるのかいささか疑問を感じ始めている。
「…………」
「運動できるだろー? 勉強できるだろー? 優しいし、格好いい!」
「そりゃどうも……」
運動ができるのはこの身体の運動神経が良いからだろうし、勉強ができるのは前世からの知識とコツコツやっている努力のおかげだ。別に優しくはないし、格好良くもないと思う。
「そういや間切って盗撮得意か?」
「唐突すぎないか」
「いや、そういやしてるとこみたことないなって」
盗撮しているところ見られちゃだめだろ。いや、してないけど。基本的には風景とか撮ってるし。人を撮るにしても結構被写体の近くで撮ってるから、盗撮と言うにはちょっと。
「盗撮って楽しいのかね〜」
「さぁ。……そんな気になるの?」
「よくされてるから」
何やら問題発言が聞こえた気がする。
え、よくされてるの? それ平然と言っちゃうの? この子大丈夫? 危機感とかある? 新聞部の時も盗撮されてたよな?
「まぁ悪用はされてないし、いっかなって」
良くないと思うんだ。
心の中でのツッコミを声に出せない。いやもう本人が気にしてないしいい気がしてきた。
あははと笑う赤坂に一抹の不安を覚えながらも私は空を見上げた。良い天気だ。
今年はうちの組が優勝した。




