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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
174/232

おまけ 親の話

 息子が体調を崩した。


 本人いわく寝不足。けれど寝不足だけで食事を拒否はしないと思う。どうやら食べても戻してしまうらしい。

 私がベッド脇でそんなことを考えていると息子がこちらに目を向けた。目があったので逸らさずに見つめ続ける。


「……」

「母さん、どうしたの」

「学校で何かあった?」

「……生徒会の仕事が忙しくて」

「それだけ?」

「勉強してて」

「それだけ?」

「……」

「……」

 ベッドの上で黙り込んでしまった息子をこちらも無言で見つめ続ける。寝かせるべきだろうけど、今は少し話を聞きたい。


 うちは他の家と比べると放任主義な傾向があると思う。夫婦揃って働いていることもあって子どもたちが家事をやってくれることが多いし、そのせいか自分たちでできることは自分たちで解決するきらいがある。それは別にいい。子どもたちはこの先私達のもとから自立していくのだ。自分のことが自分でできるようになるのは悪いことではない。

 けれど、いくらしっかりしていても子供なのだ。私達が守るべき子供。

 どうやら放任しすぎたらしい。この子達、特に上二人が殆ど私達大人に頼ろうとしない。限界まで一人でやろうとする。今回もたぶんそうなんだろう。


「私には言えない?」

「……………………」

「怒らないわよ。……言いたくない?」

「…………言いたくない」

「そう。なら聞かない。でも覚えておきなさい、梓」

 ベッドで上体だけ起こしている息子に目線を合わせて言葉を続ける。


「私達は子どもたちに頼られたら泣いて喜ぶわ」


「いや、それもどうなの」

 息子はちょっと引いていた。

「だって滅多に頼ってくれないもの」

「そう?」

「そう。もっと我儘も言って良いのよ」

「わがまま」

「イエス我儘」

 単語を反芻した息子はキョトンとしたまま固まってしまった。

 いやまぁこんな風に育ってしまったのは私達のせいでもあるのだろうけど。もう少しこの子達を甘やかして育てるべきだったか。


「…………元気になったら母さんが作ったオムライス食べたい」



 息子が可愛い。


 いくらでも作ってあげようじゃないか。特別に可愛い絵をケチャップで書いてあげよう。


 息子からかわいい我儘も聞き出したところで、息子を休ませるために部屋から立ち去る。



「あ、もし何があったか言う気になったら言うのよ」


 愚痴でも何でも、と付け足してから。

 さて、取り敢えず今できることをするとしよう。









 梓も元気になったあと、週末にオムライスを家族全員分つくってケチャップで絵を描いた。味は皆美味しいと言ってくれたし、絵についても「画伯だね」と言ってくれた。誰もケチャップで何が描かれたのか当てられていなかったけど。ただのネコよ。毛羽毛現じゃないわ。

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