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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
170/232

91話



「全くフェードアウトできなかったね」



 春休み、ボーリングをやりながら秋田くんはそんなことを言う。


 そう言えば、結局フェードアウトできなかった。普通に会話していた。


 勢い良く転がされたボールがピンをなぎ倒していく。8本倒れた。


「なんでこうも上手く行かないかね」

「ほんとに、ねっ!」

 私は水を飲みながら言う。秋田くんはまたボールを投げた。


「なんで俺達あんなに気に入られてるんだろ」

「さぁ。秋田くんボーリング上手いね」

「そうかな」

「そうだよ」

 私の番になったのでボールを手に取る。重い。もう少し軽いものにすればよかったか。


「俺さぁ、この間赤坂くんの家に招かれたんだけど」


 ガコ、という音が響いてボールが溝に落ちた。突然の言葉に驚いて投げる方向を間違えた。なんてタイミングで言うんだ。


「何やってるの波留さん」

「君が驚かせるからだ。で、行ったの?」

「行った。広かった。凄かった」

 何が凄かったんだろうか。やはり広さかな。

 戻ってきたボールをもう一度手に取る。次はきちんと投げねば。


「というか、君随分と仲良くなった、ねっ!」

 今度は真っ直ぐにボールが進んでいく。よし。

「まぁね。一緒にゲームやったよ」

「凄いじゃん」

「容赦無く負かしたら次を約束させられてた」

「あはは」


 負けず嫌いだったみたい……と、秋田くんは呟く。そうか。赤坂は負けず嫌いなのか。年相応でいいんじゃないかな。


「あと、最近気がついたんだけどさ」

 ボールを手に持ち、投げる準備をしながらも秋田くんは話を続ける。




「台風の目の部分って静かだよね」




「早まるな」

「まだ何も言ってないよ波留さん」

 言わなくてもわかる。離れるんじゃなくてむしろ近づいて中心にいたら平穏なのでは、とか言うんだろう。


「やっぱり平穏ではないかな」

「たぶんね。うわ、ストライク」

「いえーい」

 本当に秋田くんはボーリングが得意らしい。


「まぁ過ぎちゃったものは仕方ないし、何も起こらないことを願うばかりだね」

「木野村さんもゲームと違ってだいぶ落ち着いてるし、篠崎くんたち外部生もそこまで鬱憤をためてるようには見えない。何も起らないって信じてるよ」


 気がつけば取り巻きたちは大人しくなっていて、外部生と仲良くする内部生も増えていた。

 何があって取り巻きが大人しくなったのかは知らない。私が知らない場所で何かあったんだろう。

 ボールを手にとってレーンの前に立つ。ストライクとか出してみたいものだ。





 結局、私はストライクを何回か出したが秋田くんには勝てなかった。僅差で負けたので少し悔しい。


「楽しかったー!」

「そうだね」

 ボーリングを終えて、やりきった感をだす秋田くんと電車に乗る。電車は空いていた。


「波留さん」

「んー?」

「これからもよろしく」

「こちらこそ」




 もうすぐ、私達は高校生になる。




中学生編の本編はこれで終了です。だいぶ長くなってしまいました、すみません。

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