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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
166/232

87話



 修学旅行も終わって数日、学校は学園祭へと向けて動き出していた。


「裏方ってなにやるんだ?」

「作る」

「説明雑過ぎないか……」


 今年は劇をやることになったうちのクラス。なんと台本も一から作ることになった。私達は裏方。篠崎も最初は役者をやらされそうになっていたが全力で拒否した結果裏方になった。


「にしても、今日来れるの俺達だけか」

「皆習い事とかで忙しいからね」

 篠崎と二人演劇部までの道のりを歩く。

 台本についてはもう作成が終わり、いまは衣装や小道具の作成を行っている。初等部のときよりも自分たちでやる作業が増えたので地味に忙しい。


「生徒会大丈夫かな」

「大丈夫だよ多分」

 たぶん。


 クラスの方に参加するため今日は生徒会には顔を出せない。生徒会もこの時期は忙しいから少し心配だ。



 演劇部の部室の扉を開け、中に入る。この時期に入るのは久しぶりだな。中等部に上がってからは学園祭で演劇をやる機会も減ったから。


「……」

「……」


 中にはドレスを身に纏って死んだ顔をした辻村がいた。そしてその周りにはやりきった顔をする演劇部員たちと、山内くん、赤坂、そして男装した木野村と東雲先輩がいる。


 私は今すぐ踵を返したくなった。帰りたい。


「……なんで僕なの」

 辻村が死にそうな顔のまま呟いた。あ、自分から着たわけではないのか。


「哉太に着せるのは可哀想だろ?」

「それで僕が着る意味……」

「毎年恒例だからな!」

 何もできず佇む私達を置いて彼らの話は続く。


「なんで僕が着ることになるのさ……」

「いや、最初は俺が着ようとしたんだけどな?」


 陽気に笑いながら辻村の質問へと答えていく赤坂。彼は服こそ制服のままだが、髪型はウィッグをつけているのか背中の中ほどまで伸びている。取らないのかな……。


「入らなかった! 身長的には問題ないんけど如何せん肩幅とか筋肉がな」

「……」


 スッと自分の体に視線を落とす辻村。丈は若干足りていないように見えるが、ファスナーは上まで上がっているし、きちんと着れている。


「だからマサなら入るし似合うかなって」

「入ったけどもう似合わないよ。もう女装は無理だよ」

「いやいける。自分を信じろ! あ、篠崎に間切〜!」


 とうとう見つかってしまった。とっとと立ち去るべきだったな。

 見つかってしまったものは仕方ないと、辻村たちのもとへと足を進める。


「マサ、似合ってるよな?」

「見ないで」

 私の視界から去ろうとする辻村の姿をジッと上から下まで眺めて、なるほどと頷く。


「首から上は美人だね。綺麗」

「嬉しくない」

「首から下は?」

「いややっぱり男だってわかるし。もう少し体型が隠れる服のほうがいいんじゃない?」

 せめて首もとと肩幅、腰回りはごまかせる服が良いと思う。


「じゃあマサ、こっち着るか?」

「着ないよ?」

 どこから取り出したのか、赤坂はフリフリのドレスを手に辻村に聞いた。本当にどこから取り出したのか。


「ところで東雲先輩は何してるんですか?」

 カメラで辻村の姿を収める私の隣で篠崎が執事服を身につけた東雲先輩に聞く。因みにその隣にいる木野村もお揃いだ。



「忙しすぎて疲れたので後輩見て癒やされに!」

「それでなぜ執事服」

「着てくれとお願いされたので! 似合うでしょう!」

「あ、はい。似合います」

「ありがとう! 篠崎くんもきっと似合うわよ!」

「着ません」

「たまには可愛い後輩に囲まれて癒やされないと仕事なんてやってられないわ〜夏鈴ちゃん可愛い〜」


 だめだ。東雲先輩が壊れた。

 木野村の頭を撫でて恐らく癒やされているんであろう東雲先輩は普段の毅然とした態度から考えられない程のぐだぐだ具合だった。相当疲れているらしい。まぁ害はないからいいか。木野村も何だかんだ嬉しそうだし。


「さて、作業するか」

「え、これ放置? この状態で作業?」

「二人しかいないけど頑張ろう」

「本当にスルーするのかよ。頑張るか……」


 東雲先輩たちを放置して二人で作業を始める。生徒会がある私達はあまりクラスに貢献できないのでなるべく進めておきたいところだ。

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