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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
16/232

じゅうご 一年夏休み最終日 前半

 夏休みも最終日、最終日を飾るに相応しい晴れ晴れとした青空が広がっている。





 そんな良い天気の中、私は学校の離れの一室で木野村と向かい合っている。帰りたい。



 事の発端は昨日の夜、1つの電話がかかってきたことだった。電話は私が取ってしまった。


「はい」

『夜分遅くに失礼します、間切さんのお宅であっていますか?』

「あってます」

『私、木野村と申します』


 何故君が私の家の電話番号を知っている。クラスが違うから連絡網には載っていないはずだ。


「…………木野村さん、こんばんは」

『あら、間切波留さんご本人でしたか。こんばんは』

「うん……どうしたの?」

『少しお願いがありまして、明日の八時に学校へ来ていただくことは可能かしら?』

「いいよ」

『ありがとうございます。要件はそれだけですわ。おやすみなさい間切さん』

「おやすみなさい」

 向こうが電話を切ってからこちらも切る。私はこの数分で疲れきっていたし、正直次の日が怖かった。


 そしてきてしまった当日。私は指定された時間の30分前に学校についた。家にいても落ち着かなかったので早めに出てきた。

 はずなのに、校門のところには既に木野村がいた。何なんだ君は。なんで腕時計をみながらソワソワしてるんだ。デートが楽しみすぎて早くに来てしまった彼女か。

 その後、震える足をなんとか動かし、木野村と合流すると離れに案内された。離れはもうほぼ一軒家状態だ。大きい。今回私が通されたのは和室だった。そして今に至る。

 無言。無言だ。木野村が何も話さない。沈黙が重い。私から話すべきだろうか。取り敢えず木野村の後ろに置かれた袋たちの存在が気になるのでそれを聞いてみるべきか。


「間切さん」

「はいぃ!?」

「遅くなってしまいましたが、遠足のときは助けていただき、ありがとうございました」

「へ?」

「私一人ではみんなと合流できませんでした」

 携帯壊れてたしね。

「いや、私はそんなたいしたこと」

「あと、携帯のデータも無事でしたわ。ハンカチ、お返ししますね」

「そりゃよかった」

「それと、お詫びとお礼を兼ねまして…」

 私がハンカチを受け取ると木野村がスッと後ろに手をのばした。

「お土産です」

「えっ」


 言葉とともに私の目の前にいくつもの袋が置かれた。まさかこれ全部とか言わないよな。


「これがフランス土産、これがイタリア、ドイツ、アメリカ、イギリス……」


 この子は夏休み中に世界一周でもしてきたのだろうか。


 尚も国名を上げ続ける木野村に私はもはや畏怖すら覚える。金持ち凄い。

「そしてこちらが京都土産ですわ」

 最後は日本に落ち着くんですか。

「あなたの好みがわかりませんでしたので私の好みで選びました」

「……あの、まさか、これ全部私宛……?」

「全部あなたへのお土産ですわよ」

 金持ち凄いなぁ……。お土産だけでも格が違うね。うちも一応金持ちだけどここまでじゃない。こんな高価そうなお土産いくつも買わない。

「あ、ありがとう」





「あれ? 木野村と間切だ。何してるの?」


 私がひきつった笑顔を浮かべていると閉じられていた襖を開けて赤坂が顔を出した。何故いる。今日はまだ夏休みだぞ。

「間切さんにお礼とお詫びを兼ねたお土産を渡しておりましたの」

「お礼とお詫びって……あぁ、お前が迷子になった時のか」

「そうですわ」

「あれは驚いたなー。木野村がいなくなってるのに誰も気が付かないから探しに行こうと思って先生に声かけようとしたら電話かかってくるんだもんな」

 へぇ。赤坂は木野村がいなかったのに気がついて、探そうとしてたのか。じゃあ私がいなくても木野村は赤坂にみつけてもらって、無事に合流できたんだんだな。




 ん? 赤坂に見つけてもらう?


 あ、思い出した。そうだ。たしか、ゲームの設定資料で、木野村の説明ではこういう文があったはずだ。『小学一年生の時の遠足で迷子になったところを赤坂に見つけてもらったことがきっかけとなり、恋心を募らせていく』と。




 つまり、私は、木野村と赤坂のイベントを1つ潰したということか。

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