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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
15/232

じゅうよん 一年夏休み 3

「次! 次あっち!」


 水族館に着いてからの圭のはしゃぎっぷりが凄い。兄が振り回されている。


 水族館は夏休みということもあってそこそこ混んでいるからたぶん手を離したら迷子になるな。



「波留ちゃんは何か見たいのある?」

「どれも見ていて楽しいです」

「そっか。じゃあ好きな魚はなに?」

「クラゲとメンダコですかね」


 クラゲは綺麗だし、メンダコは可愛いから好きだ。特にメンダコのグッズはどれも可愛い。ぬいぐるみとか欲しい。


「メンダコは流石にいないね。クラゲ見に行こうか」

「いいんですか?」

「大丈夫でしょ」


 兄と圭に声をかけて、後で落ち合う約束をしてから二人と離れる。圭は魚に夢中だったのでたぶん聞いてない。


「一宮さんはなんの魚が好きなんですか?」

「俺? んー…熱帯魚とか綺麗だから好きだなぁ」

「色鮮やかですよね、熱帯魚」

「そうそう。テトラとかグッピーとか」

「テトラ可愛いですよね」

「ねー」

 クラゲのあとは熱帯魚コーナーに向かおう。テトラ見たくなってきた。

 一宮さんと熱帯魚談義をしているうちにクラゲコーナーに辿り着いた。クラゲコーナーは人が少なく、落ち着いてクラゲを見ることができそうだ。私は早くクラゲを見たくて一宮さんの手を引いて水槽に近づいていった。







「波留ちゃん」

「っはい!」


 一宮さんの私を呼ぶ声に急いで振り向く。しまった。クラゲに夢中になりすぎた。


「梓がもうそろそろ集まろうって。二人はあとサメだけみに行くみたいだけど、波留ちゃんは行きたいところある?」

「熱帯魚見たいです」

「じゃあ行こうか」



 熱帯魚は色鮮やかなのが多くて見ていて楽しかったし、熱帯魚について懇切丁寧に教えてくれた一宮さんは凄いなと思いました。一宮さんは凄く熱帯魚に詳しかった。イキイキしてた。


 昼食は水族館内にあるレストランでとって、午後はイルカショーを見た。イルカってすごい飛ぶんだな。


 そしてお土産を選ぶために私達は店に来ていた。うーん、メンダコはないか。キーホルダーとか欲しいな。

 物色していると小さなイルカのキーホルダーが目についた。よくあるデザインだが可愛い。これにしようかな。値段も親から渡された予算以内だし。

 私が買うものを決めたあとも店の中をフラフラしていると圭が何かを熱心に見ていた。


「圭?」

「お姉ちゃん! 僕これにする!」

 振り返った圭が見せてくれたのは写真集だった。これはたぶんあれだな、値段見てないな。

 圭からその商品を受け取り、値段を見ると一人分の予算を軽くオーバーしていた。というか私と圭の二人分の予算でギリギリだ。

 ちらりと圭を見れば目を輝かせながらこちらを見ている。

「綺麗だね、これ。私も一緒に見てもいい?」

「うん!」

「そう。じゃあ兄さんには『お姉ちゃんと一緒に見る』って言ってこれ渡しておいで」

「はーい!」

 まぁ、圭が喜んでいるからいいか。キーホルダーはまたの機会に。これ、もどしてこよう。



 帰り道はまた一宮さんと手を繋いで歩いた。私達の前を兄と手を繋いで歩く圭はもうスキップしそうなくらい上機嫌だ。よかったよかった。

「波留ちゃん、これ」

 私が圭を見て安心していると一宮さんに何かを握らされた。なんだろう。

「…………イルカ」

 開いた手の上に乗っていたのは私が諦めたイルカのキーホルダーだった。……これを選んだところを見られてたのかな。

「そう。今日の記念にね。あ、俺とおそろいだよ」

 そう言って一宮さんも色違いのイルカを見せてくれる。お揃い。たぶん私を気遣ってのこと何だろうけれど、嬉しいものは嬉しい。

「いいんですか?」

「波瑠ちゃんは俺とお揃い、いや?」

「嬉しいです」

「それはよかった」

 素直な気持ちを言葉にすれば一宮さんは少し照れながら笑ってくれた。うむ。これは……。





「一宮さんて将来女たらしになりそう」

「……」

 一宮さんと別れ、家についてから兄に言うと「何言ってるんだこいつ」という顔をされた。今日の感想だよ。


 イルカのキーホルダーはどこにつけるかを全く考えていなかったのでとりあえず勉強机に飾っておいた。

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