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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
136/232

57話



「うーん、予想よりも疲れてるね」


 放課後の生徒会室に一宮さんの声が響く。

 今現在ここにいる生徒会役員は兄弟と私と篠崎だけだ。あとは先生に連れ出されたり、各々の仕事をこなしに行ったりしている。


「今年の学園祭実行委員役に立たない……」

「梓がそんなこと言うなんて珍しいね」


 生徒会室の隣にある給湯室でお茶を淹れてきてくれた一宮さんがそれを配る。兄が他人をそんなふうに言うのは珍しい。否定しないけど。あの人たち本当に必要最低限しかやらない……っていうか明らかに一部の仕事をこちらに回している。書類を叩きつけてやりたい。


「まぁいいどさ……。ところで宏和、この練切りなに?」

「茶道部で余ったの。食べて。あんまり日持ちしないし」

「いただきます」


 一宮さんが持参した練切りは緑茶とともにそこにいた生徒会メンバーに配られた。いただきます。ところで。


「……何故辻村くんがいるのか」


 生徒会室には何故か備え付けのソファで練切りを食べている辻村くんがいる。その隣に一宮さんも腰掛けた。


「連れてきちゃった」

「来ちゃった」

「お茶目か」


 仲良いな畜生。


「辻村……………………様、は茶道部だったのか」

「様付けなくていいよ。一応茶道部に入ってる」

「じゃあ辻村くんで。この練切りってやっぱお高いの?」

 気になるのそこか? いやまぁ気になるけど。これすごく美味しいし。圭がすごく幸せそうな顔をしてるから、もし店が近くにあるなら買いに行きたい。


「部長、これって高いんですか?」

「そーでも。普通の和菓子屋さんから取り寄せてるよ」

「へぇ……」

 一宮さんの言葉を聞いてから篠崎は練切りを食べ始めた。篠崎よ、騙されてはいけない。この人たちの普通は私たち庶民の普通ではないんだ。


「宏和、おかわり」

「はい」

「あるんだ。冗談のつもりだったのに……」

「まだまだあるよ」

「どんだけ発注したの?」

「今回の部会に出た人数が異常に少なかっただけだよ」


 おかわりした練切りを食べる兄は少し回復したようだった。よかったよかった。あとさり気なく圭もおかわりしてた。


「間切さんと篠崎くんもおかわりいる?」

「いる」

「甘いのっていいよな。いる」


 辻村から手渡されたそれをまた一口口に含む。とても美味しい。疲れた体には甘いものだよね。


 2個目を頬張る私達の隣で、圭は3つめを食べ始めていた。食べ過ぎではなかろうか。可愛いから良いけれど。





「練切りいいなぁ」

「美味しそうですね」

「わたしにもください……」


 暫くすると生徒会室にいなかった北川くん、東雲先輩、楠木先輩の三人も戻ってきた。疲れ果てた様子で。そして楠木先輩は傷をこさえて。

 一宮さんと辻村は三人にもお茶と練切りを用意して、のんびりとした時間を過ごした。圭は4つの練切りを食べていた。夕飯はいるのかね。

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