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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
131/232

52話 2年夏休み2


 今日はあいにくの曇り空。しかしまぁ湿気はあるし気温もそこそこ。晴れの日よりは過ごしやすい気候の中、私は尻尾を振り、こちらをつぶらな瞳で見上げてくる犬と対峙していた。




「……」

「うちの愛犬、もなかです」

 よろしくね、とお兄さんが地面に座る犬を撫でた。



「可愛いですね」

 飼い主であるお兄さんの許可も得たのでワシワシと犬を撫でる。ふわふわ……良い……。


「でしょ〜? 自慢の子だよ」

 もなかちゃんの話をするお兄さんはでれでれしている。凄くデレデレしている。これが親ばか……。

 ところでだ。


「今日は鳩いないんですね」


 そう。お兄さんの周りには鳩がいない。いつもなら多くの鳩に取り囲まれているお兄さんだというのに。おかげでお兄さんを見落とすところだった。鳩を目印にしてたから。



「そう! もなか連れてきたら囲まれなかったんだ!」

 心の底から嬉しそうに笑うお兄さん。よかったね……。

「今まではもなかが鳩に怯えたらあれだから連れてこなかったんだけど……連れてきてよかった」

「よかったですね」

「うん。で、今散歩中なんだ。長居するともなかが熱中症になってしまうし、今日はあまり君と話せないんだよね……」

「えっ……」

 もう少しもなかちゃんの毛並みを堪能したい。それにお兄さんとも話したいし……。でもそうだよな。もなかちゃん熱中症になるもんね。仕方ない。


「途中まで一緒に歩いても?」

「願ったり叶ったりだよ」


 やったね。立ち上がり、歩き出したお兄さんの後をついて私も歩き出す。もなかちゃん可愛い。尻尾がとても可愛い。







「一年で随分と凛々しくなって……」


 猫の成長は早いものだ……。

 歩きながら見せられた写真を見て感嘆の声を洩らしてしまう。以前見せてもらったときはまだ小さな子猫だったというのに、昨日撮ったというこの写真に写る猫はそれはもう立派で……。


「ね〜。でも可愛い。うちの子1番」

「親ばかですね」

「可愛いから仕方ないね」

「可愛いは正義っていいますしね」

「そうそう」


 2人と一匹でのんびり歩きながら他愛もない話をする。やっぱり犬の尻尾って可愛いな。触りたい。取り敢えずかわいいから写真撮っとこ。



「っと……私はここで」

「ん。じゃあ手出して」

 素直に両手を差し出す。

「いい子。はいこれ」

 手に乗せられたのは見たことのない店名が書かれた袋だった。なんぞこれ。


「ここから少し離れたところにあるパン屋で買ったお菓子。美味しいよ」

「へぇ〜。どのあたりですか?」

「ここから2駅くらいかな」

「なるほど」

 行けない距離ではない。行ってみるか。

「あともう一つ」

「?」


 まだあるのか、と手を差し出せばコロンと飴玉らしきものが3つ手のひらに乗せられた。




「みそ味……」

「近所のスーパーに売ってた。こっちが赤味噌。こっちが白味噌。そしてこれが合わせ味噌」


 なぜ三種類……。


 久々に見た奇抜な味の飴に頭の処理が追いつかない。何故これを作った人はそんな細かいところまで拘ったのか。いや、普通に使うときはこだわりとかあるだろうけど、飴だぞ。


「じゃ、またね」

「はい。ありがとうございました」


 軽く手を振ってお兄さんと別れる。っていうかそろそろ私は貰いすぎだし、何か返すべきだろうか。でもお兄さんにはいつ会えるかわからないし……ん? お兄さんってなんでいつも飴くれるんだ? もしかして持ち歩いてるの? この奇抜な飴を? そもそもこのクッキーもどうして持ってたんだ? 今日買ったのかな。

 疑問は尽きないが、考えても仕方ないので家へと向かう。







 あ、名前聞くの忘れた。

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