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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
129/232

50話


「やっとテスト終わったー! もう自由だっ!」


 テスト最終日のホームルーム後、秋田くんがやりきった顔で叫ぶ。なぜ私の席に来て叫ぶのか。肩を揺さぶるでない。

 秋田くんがハイテンションのまま騒いでいると早苗ちゃんと美野里ちゃんも私の席に来た。


「お疲れ様ー」

「やっと終わったね……」

「ね! 今日3人とも暇? なんか食べに行こーよー」

「あ、私このあと人と会うことになってるから行けない」

 もうすっかり気の抜けた秋田くんがそう提案してくるが、私は悲しいことに行けない。


「え!? 誰?!」

「男!?」

「えっ、波留ちゃん彼氏出来たの……?」

「話の跳躍が凄い。男だけど相良先輩だよ」

 彼氏だのと宣う三人にそう告げれば早苗ちゃんと美野里ちゃんは少し残念そうにしていた。なぜだ。


「少し相談事があって、この後会うことになってるんだよ」

「そーなんだ。てっきり波留ちゃんと相良先輩がランデヴーでもするのかと」

 ランデヴー。

「私がそういった類に縁があると?」

「ないかな! 波留さんだし!」

 そう答える秋田くんに私は怒ってもいい気がする。事実なので何も言わないが。どうせ性別:間切だ。

「どこで待ち合わせてるの?」

「裏門。昇降口まで一緒に行ってもいい?」

「うん」

 ほわっと笑う早苗ちゃんと、それを暖かく見守る二人に安心して、荷物を手に取る。相良先輩は今日3教科……私と同じ時間に終わるはずだ。もう裏門についているかもしれない。


 4人で教室から出ようとしたら扉のところで辻村と会った。どこかへ行っていたらしく、彼は教室へと戻ってきたところのようだ。


「4人ともまたね」


 バックに薔薇でも背負いそうなほど美しい笑顔で辻村がそう言うと美野里ちゃんと早苗ちゃんが吃りながらも返事をする。二人はやはり敬語だ。


「……さようなら……?」

「…………ごきげんよう??」

「無理して丁寧に話さなくていいよ」

 前世を通しても同級生に異常に畏まった言葉で話すことなど殆ど無い私と秋田くんは違和感を持ちながらも返事をした。そしたら苦笑いで返された。なんだかんだ1学期はあまり辻村と話さなくて済んだからな。やはりまだ違和感がある。



「美しい……!」

「少女マンガに出てきそう!!」

 辻村と別れたあとの美野里ちゃんたちはテンションが高かった。実際、漫画ではないが乙女ゲームには出ていたので曖昧に笑って返しておく。秋田くんは明後日の方向を向いていた。







「間切くんに何かあったのか?」



 秋田くんたちと別れて裏門に行けば、相良先輩と何故か時沢先輩がいた。疑問には思ったが特に口にはせず、三人でカフェに行く。相良先輩のおすすめだそうだ。とてもおしゃれ。


「兄がどうもストレスをためているように見えたので」


 簡潔に答え、水を飲む。さてさて何を頼むかな。


 因みにストレス源は生徒会関連ではないと思われる。人数があまり増えていないとはいえ圭も入ったし、北川くんも中々要領が良い。それに学園祭の時期ではないから仕事量もさほどないはずだ。


「う〜ん、知ってるっちゃ知ってる、かな」

「教えてくれますか?」

「口止めもされてないからね。でも私が知ってるのはあくまでも私が見聞きしたものだから、他にもあるかもしれない」

 それでも構わない。中等部と高等部では離れすぎていて兄の情報が何も入ってこないから、何か知ってるのであれば教えてほしい。



「今の時期はアイスが多いな」

「私ブルーベリーのやつね」

「オレはこの季節限定だな。間切さんは?」

「オレンジで」

 シャーベット美味しそう。



「で、間切くんだよね。あれだよ。戸柄さん」

 あぁ、たしか兄に恋している写真の美人さん。

「戸柄ってたしかあの子が記事にしてたよな」

「してたねぇ」

「あれグルだったぞ。あの子が白状した。戸柄に頼まれたらしい」

 グルだったのか。なんともまぁ……手段を選ばないというか……なんというか。すごいな。



「彼女が間切くんと同じクラスになったんだよ」


 それがどうして兄のストレスになるんだろうか。あ、また付きまとわれてるのか?



「休み時間は毎回付きまとわれて、席が近いらしくて授業中も何かと接触してくる。勿論昼食時も一緒。確かお弁当まで作ってきてるって話だよ」

「……兄は週に3日程、弁当を持参しているはずですが」

 家族の誰かが作ったものを。私も週3くらいで持って行っている。ところでこの間兄が作った弁当、またデコ弁だったんだが。ハマっているんだろうか。


「間切くん、戸柄さんのは食べてないよ」

 そうなのか。弁当がある日はそれを理由に断ってるんだろうけど、それ以外の日はどうしてるんだろう。


「あとは……そうだな、帰り道すらも付き纏われているって聞いたな。それと間切くんに近づく女子を威嚇するとも」

「そこまでいくとストーカーじゃないか?」

「かもね」


 そこまで話したところで注文していたアイスが届く。美味しそう。


「で、そのストー………じゃない。戸柄先輩が兄のストレス源だと」

「まぁ、そうだねぇ。あとは彼女の信者たちかな」

「しんじゃ」

 相良先輩の口から飛び出た驚きの単語に手が止まる。相良先輩と時沢先輩はアイスを食べ続けていた。時沢先輩の幸せそうな顔よ。


「銀杏会の子たち程ではないけどね。あの学年では一番と言えるくらいお金持ちなんだよ」

「はぁ……」

「それに加えて、間切くんに関係することへの態度以外は至極まともなんだ、彼女。それに加えて見目も結構いい。だから少なからず彼女崇拝する人間もいる」

「うわぁ……」

「その子たちがね、あの新聞記事を鵜呑みにして暴走してるみたいなんだよね。それもストレス源なんだと思うよ」

 どうやらうちの兄は苦労人のようだ。同情する。



 兄の体調を心配しながらも、その後は軽い雑談をして、その日は解散となった。会計時、お金を払おうとしたら時沢先輩に話しかけられ、話している間に相良先輩が会計を済ませていた。今日呼び出したのは私なので私が払う、せめて自分の分は払わせてくれと言えば二人揃って「やだ」と笑顔で言い放ってくれた。仲良しかよ畜生。




「間切さん」



 帰り道を歩いていると相良先輩が私の名を呼んだ。振向けば先輩が二人とも真面目な顔をしてこちらを向いていた。相変わらず顔の整った人間の真顔は怖い。






「恋に盲目な人間は何をするかわからないから、用心するんだよ。何かあったら周りに相談しなさい」








 ふと、私を刺した男2人が頭を過ぎった。思い出したくもないことを思い出させてくれる。

気がついたら年が明けていた上に前回の更新から1ヶ月空いてました。

 不備がなければ中学生編が終わるまで毎日二話ずつ更新されます。

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