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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
118/232

相良当麻と

「君はさぁ、もっと私を労るべきだと思うよ」



 キラキラと日の光を反射する髪を揺らしながら相良が拗ねたように呟く。


「よくがんばったな」

「棒読み〜」


 白い壁に囲まれた病室で、ベッドの上に座っている男が見事なまでの棒読みで答えれば相良は更に拗ねた。そんな相良を無視しながら男は林檎の皮を剥いている。


「……幼馴染である君を階段から突き落としたあの子にギリギリまで何も手出ししなかったんだよ。褒めて」

「それについてはありがとう。まぁ、結局あの子は更生しなかったわけだが。それについてはすまなかったな。お前まで階段から突き落とされるとは」

「凛太郎と違って私はほぼ無傷だけどねぇ。あの子は流石にやり過ぎたから、大人も交えて対処させてもらったよ」

「肋骨にヒビが入ったオレとほぼ無傷のお前、何が違うんだろうな。オレの後輩が迷惑をかけたな」

「身体の丈夫さと当たりどころの悪さじゃない? 病弱な凛太郎と丈夫な私だし」

 凛太郎と呼ばれた男は剥いた林檎を8等分した。その一切れを相良はヒョイッと口に入れる。ちなみにこの林檎、相良からの見舞い品である。


「で? その合成写真の証拠とやらはどうやって手に入れたんだ? お前部室入れないだろ」

「後輩が優秀なんだよ」

 ふふん、と自慢気に相良が答える。凛太郎はその反応に首を傾げた。


「間切くんか? 東雲さんか? でもあの二人も有名だし、部室には入れないだろ」

 部室には基本部員しか入らない。また、相良を含めたその三人は生徒会に所属し、尚且つ役職持ちである為学内でも有名であり、三人とも部活に所属していないことも知れ渡っている。そんな三人が新聞部の部室に入り、尚且つ写真のデータを外に持ち出すのは難しい。


「間切くんの妹さんだよ。今年から入ってきたの」

「へぇ」

 確かに中学1年ならば存在を知らない人間のほうが多い。あの三人よりは部室に入りやすいだろう。


「間切くんそっくりだよ〜」

「愛想が良くて成績優秀?」

「いや、無表情。でもね、感情はわかりやすいよ」

「意味がわからない」

「なんか雰囲気? 表情は殆ど変わらないけど、感情は読みやすいかな」

「それはまた器用な」

「でしょ〜。面白いよ。もう一人の新入生、篠崎くんも優秀だし。………………私を捕獲できるくらいには」

「お前まだ脱走癖抜けてないのか。後輩が困るからやめろ」

 ボソリと付け足された言葉に凛太郎がツッコミを入れる。相良が逃げ回るのは今に始まったことではない。しかものらりくらりと移動するので中々捕まらないのだ。高身長に金髪という目立つ容姿をしているにも関わらず。


「凛太郎は次いつ学校来れるの?」

「話をそらすな。……こじらせた風邪が治ったら」

「肋骨が治ったら風邪って……凄いよね。しかも入院レベルって」

「ははは」

「早く復帰しなよ」

「おう、任せろ」

「凄い。不安しかない」

「張っ倒すぞお前」

「はは、怖い怖い。じゃ、私は退散するよ」

 そう言って相良は立ち去り、病室をあとにした。病室にはその部屋の主だけが取り残される。凛太郎は残っていたリンゴを食べきってから、ため息をついた。







「あいつ……教師から頼まれて持ってきたって言ってたオレの課題プリントとその他諸々を全部持って帰りやがった……」





 数時間後、相良は慌ててこの病室に駆け込んでくることになった。

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