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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
116/232

39話




「会長、これ差し上げます」

「なにこれ?」

「そこのパソコンで見たらわかりますよ」


 二人きりの生徒会室。そこに置かれたパソコンを指差せば相良先輩はそれを起動する。私はソファに腰掛けて紅茶を飲んだ。

 新聞部にお邪魔した次の日の放課後、私は相良先輩を生徒会室に呼んで写真のデータが入ったUSBメモリを彼に渡した。私が持っていたところでどうにかできるものではない。


「…………へぇ」

「それ、何かに使えます?」

「そうだねぇ」

 ならよかった。


「これ、どうしたの?」

「新聞部の部員の方が部室に入れてくれまして。パソコン弄るのも、画像を持ち出すのも許可してくれたので持ち出しました」

「へぇ~?」

「……………嘘はついていませんよ。脅してもいません」

 私は何も言っていない。嘘もついていない。…………まぁ、あの先輩に対して自責の念が全く無いかといえば嘘になるが。嘘は言っていないが、ある意味騙したようなものだ。

「そっか。このUSBメモリ借りていい?」

「どうぞ」

 そのUSBメモリは趣味用なので、授業では使わないし、しばらく無くとも問題はない。


「会長はそれを使って何をするんですか」

「んー? あの記事を書いた人間をどうにかして見つけて、先生方と話し合って対処するだけだよ」

 今回のは行き過ぎだから私達だけではどうしようもないと、相良先輩は言った。


「間切さんが直接この人に何かしたいなら、事によっては手を貸すけど」

「? 私が?」

「間切さん怒ってるでしょ。お兄さんのこと書かれたし、同級生についても随分な記事を書かれてる」

「別に。不快ではありますし、憤りも感じますが私は何もされていません。私が何かするのは違うと思います」

 そうだ。私は確かにあの記事に対して不快感を示した。が、私自身は何かをされたわけではない。あれを書いた人間がきちんと然るべき処罰を受けるなら何ら問題はない。


「そっかぁ」

「それを言うなら相良先輩こそデタラメを書かれた張本人ですし、なにかやりたいのでは?」

「私、別にあの記事に関しては何も感じなかったからなぁ」

 ……に関しては、ということは別のことでは何かあるのかな。

 気にはなったが他人のことにとやかく言うわけにもいかず、何も聞かないことにした。それに私の考え過ぎかもしれない。


「では、私はこれで」

「もう帰るのかい?」

「今日の夕飯係私なんですよね」

 なので早めに帰りたい。今日の夕飯の献立すら決まっていないのだ。個人的には魚の気分だが、どうするかな。

 紅茶をいれていたカップを洗いながら夕飯の献立について思案する。そういえば最近寒くなってきたな。そろそろ鍋なんかもいいかもしれない。トマト鍋ミルフィーユ鍋、寄せ鍋……どれも美味しいんだよな。スーパーに行けばいろいろな出汁があるし。


 鍋に思いを馳せているとふと手元に影が落ちた。ついでに頭頂部に重みを感じる。


「会長重いです」

「んー」

 私の頭に顎を乗せているであろう会長からの返事はなんとも気の抜けるものだった。

「会長?」

「間切さんは小さいね」

「成長期ですほっといてください」

 最近圭と視線の高さが同じになってきて少し気にしてるんだよ。あれは圭の成長が早いだけって信じてる。私は女子の平均はあるし。


 カップを拭いて安全なとこに避難させ、くるりと体を回転させる。それに驚いたのか会長の身体が少し離れた。


「どうかしたんですか、会長」

「んーん。……そうだな、少しだけ気分がいいんだよ」

 それにしてはテンションが低い気がする。まぁ、人によってテンションなんて違うしな。

 私が一人納得していると両頬を両手で挟まれた。

「ぅむ…………」

「やわらかーい」

「……」

 むにむにと、相良先輩が私の頬を両手で挟んで遊ぶ。なんなんだ。酔っ払ったおっさんか貴方は。







「あー、楽しかった。さ、私も帰ろうかな」

「……」

「……いや、うん。おもちゃにしてごめんね? クッキー食べる?」

「食べます」

 クッキー美味しい。

「あ、そうだ。間切さんに良いこと教えてあげるよ」

 クッキーを更に差し出してきた相良先輩がそう言った。何だろ。

「赤坂くんのあの記事ね、出鱈目なんだよ」

「!」

「赤坂くんはあの教室に30分程度しか居なかったんだよ。だからあの記事は半分以上が嘘」

 へぇ。ん? じゃぁなんで赤坂は女子から逃げて……。いやまぁ、怖い目にはあったんだろうな。うん。新聞書いた人間もだけど、赤坂をそんな目に合わせたやつもどうにかしてやりたいね。ところで。

「…………なんでそんなことを会長が知ってるんですか?」

「風の噂」

 風の噂って凄いな。

 そんな凄い風の噂をよく聞く相良先輩なら赤坂を怖がらせた輩の名前なんかも分かりそうだが、わかったところで私にはどうしょうもないので聞かなくていいか。それよりも。


「赤坂くんと一緒にいた女生徒はどうなりましたか?」

「然るべき対処をされてるよ」

 ならいいか。

「それは何より。では会長、私はこれで失礼します」

「私も帰るよ」


 話しているうちに結構時間が経っていたので急いで支度をして生徒会室を後にする。相良先輩も私の後をついてきた。なんだろう、こう、何か言いたげな雰囲気を感じる。っていうか生徒会室を出てから無言なんだが。無言怖い。相良先輩普段はそこそこ話すから余計に怖い。


「……あの、何か」

「いや、やっぱり間切さんって小さ……小柄だなって」

「ほっといてください」

 地道に伸びてはいるし、中学1年女子の平均はある。というか、私が小さく見えるのは相良先輩が大きいからだと思うんだ。






 …………身長って、どうやったら伸びるんだろう。


 


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