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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
114/232

37話



 朝登校すると、下駄箱で秋田くんと鉢合わせた。秋田くんと時間が被るとは珍しい。


「おはよう波留さん」

「おはよう。今日は少し遅いね」

「寝坊したんだよね」


 二人で歩きながら他愛のない話をする。今日は特に何もイベント事の無い日だ。テストも何もないからのんびりできる。

 階段を登って、中等部一年の教室がある階にたどり着けば、掲示板の前に人だかりができていた。何だろう。秋田くんと顔を見合わせてその人だかりによって行く。掲示板には昨日まではなかった新聞が貼られていた。



 赤坂と学園祭のときに見た女性が腕を組んでいる写真と、うちの学校の女学生とどこかの教室に二人で入っているときの写真が貼られた新聞だった。どでかい文字で『二股か』と書かれているから、赤坂を非難している内容なんだろう。ゴシップ誌か。

 呆れるような内容のそれを遠巻きに見ていると、少し離れた所に赤坂たち三人を見つけた。赤坂は顔を青くし、その両脇にいる二人は新聞を睨んでいた。


 いや、赤坂は顔を真っ青にして、少し震えている。どうしたんだろう。

 様子がおかしい赤坂を視界に収めたままじっとしていると、赤坂たちに女子生徒が近づいた。





 赤坂は少しだけ、ほんの少しだけ、後退った。






 女性恐怖症。


 そんな単語が頭に浮かぶ。

 確かゲーム内の赤坂は女性恐怖症だった。そうだ。夏に秋田くんが教えてくれたじゃないか。その原因も。


 もう一度、視線を新聞に向ける。



 赤坂とその女生徒は教室に入ってから暫く出てこなかったらしい。




 まさか。




 隣にいる秋田くんに目を向けると彼も同じ考えに達したらしい。視線がかち合った。



「……」

「…………」



 他人がいるこの場では何も言えず、私達は静かにその場を去った。







 放課後、生徒会室に行けば珍しく真面目な顔をした相良先輩がいた。どうやら今朝の新聞のことで何か考えているらしい。会長も大変だな。






「もう終わったの?」

「うん。少し顔出しただけだから」

 下駄箱に行けば秋田くんが本を読みながら待っていた。寒い場所で待たせてしまったな。


「それにしても……驚いたね」

「そうだね」

 適当な公園にはいり、ブランコに腰掛ける。寒いからか、子供はまばらにしかいなかった。ギコギコとブランコから耳障りな音がするが気にしない。今はそれよりも今朝のことのほうが気になる。


「今かよ……っていうか新聞に載るのかよと、思わず思っちゃったよ」

「本当にな……」

「俺さぁ、今後の平和のためにも彼らと積極的に関わろうとは思わないけどさ」

 これは、ちょっとなぁ。そう言う秋田くんに全力で同意した。

 私だって平和に学校生活を過ごすためにも彼らと積極的に関わろうとは思わない。しかしだからといって彼らが苦しむのを甘受はできないのだ。これが話したこともない他人だったら「うわ、可哀想」みたいな感想だけで済んだんだろうが、赤坂は一応友人だ。友人が辛い目に遭っているのを良しとするほど薄情でもない。


「どうにかしたいなぁ」



 さて、どうするかな。

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