じゅう 一年遠足 前半
今日は遠足です。博物館に行きます。
先生から遠足と聞き、楽しみにしていた私ですが、まさか博物館に行くとは思いませんでした。前世の遠足といえば近くの大きな公園までみんなで歩いて行って、みんなでご飯食べて遊んで、子供らしいものでしたよ? なんで博物館? 中学生のときは校外学習で行ったけどさ。小学生で博物館とか、中高生どこ行くの? オペラか? なんかオペラって高尚な感じするよね。
まぁ、とりあえず遠足に来ました。クラス別に団体行動してました。
まぁ今私ボッチなんですけども。こりゃはぐれたね。迷子だ。
とりあえず迷子は確定しているので私は携帯を取り出し、しおりに書かれた担任の携帯に電話をかける。うーん、博物館の前に動物園には寄って、そこで一度解散。好きに見て回った後また集合。うん、この集合で先生たちと合流すればいいか。その旨をつたえれば先生も了承した。何かあったら連絡することも約束したので大丈夫だろう。
よし、では一人で動物園を満喫しよう。
予めもらってある券を見せれば中には入れるらしい。助かる。
動物園に向かって歩いていると前方にキョロキョロしている子供がいた。とても見覚えがある。
キョロキョロしているのは木野村夏鈴だった。
……迷子かな……。出来れば関わりたくないけど、なんか泣きそうな顔してるし……。流石にあれを放置は良心が痛む。
「木野村さん」
「貴方、うちの学校の子?」
「そだよ。皆とはぐれちゃったの。木野村さんは?」
「……」
木野村は恥ずかしそうに目をそらした。やっぱりはぐれたのか。
「一緒に行こ。先生には連絡した?」
「してないの」
「携帯は?」
「さっき池に落としましたわ」
ドジっ子かな?
「そっか。じゃあ電話するから少し待ってて」
木野村は4組だったはず。えーと……。
番号を間違えないように打ち込み、4組の担任に電話をかける。
電話をかけ、木野村と一緒にいる旨を伝えると電話口から小さい子の悲鳴のようなものが聞こえた。木野村の取り巻きかな?
「そういえば木野村さん携帯は拾った?」
「池の底に沈んでますわ」
知ってた。お嬢様だもんね。池に手を突っ込んだりしないよね。
私は落とした池を聞き、池を覗き込む。ふむ、池の水もキレイだし、そこまで深くもない。携帯も視認できるくらいのものだ。いける。ブレザーを脱ぎ、シャツを捲って池に腕を突っ込み、携帯を拾い上げてそれをテッシュで拭う。携帯はボタンを押してみたがうんともすんとも言わなかった。壊れちゃったかな。
まぁでも携帯には情報が入ってるからね。持って帰ってもらおう。
ハンカチに包んで渡せば木野村がこちらを凝視してきた。
「携帯には個人情報が詰まってるから、情報を悪用されるかもよ」
「そ、そうなのね」
説明すれば木野村はそれを受け取る。さて、とっとと動物園に入ろう。