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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
106/232

29話



 あれから数日後、本格的に学校が学園祭に向けて動き出した。近づいてくる学園祭に生徒は皆浮足立ちながら各々準備を進めている。平和だ。うん、平和。


 例え、学園祭準備の為に一緒に行動することが多い、一つ上の楠木咲良先輩が凄まじいドジっ子で、生傷が耐えなくても。目の前で怪我をしまくっていても、平和。うん。

 そして今、そんな楠木先輩が制服のまま脚立を使って装飾している。先輩、スカートのままだから中身見えそう。体操服のズボンに履き替えてほしい。切実に。あと先輩だといつか落ちてしまうんじゃないかとハラハラするのでその役目は私がやりたかった。




「あっ」

「あっ?」


 ガタッという無機質な音とともに聞こえた先輩の声に反応して上を見れば先輩が態勢を崩していた。







「ぅぐっ」

「…………あれ? あんまり痛くな…………あぁぁぁあ!? 間切ちゃん!?」


 咄嗟に先輩を受け止めようとした私は、受けとめきれずそのまま尻餅をついた。まぁ、先輩のことは落とさなかったので良しとする。腰痛いけど。あと持っていた装飾品落としたけど。脚立から落下してたら相当痛かっただろうしなぁ。



「間切ちゃん!? 大丈夫!? ごめんね!!」

「大丈夫です。先輩こそ、お怪我は?」

「ないよ! 間切ちゃんは!? 救急車呼ぶ?!」

「呼ばなくていいです」

 腰の痛みも時期に収まるはずだ。救急車を呼ぶほどじゃない。

 あたふたする先輩を宥めながら落としてしまった装飾品を二人で拾う。次は私が脚立に登ろう。っていうか脚立が倒れなくてよかった。



「あ、間切」

「篠崎くん。それに会長…………………………何事?」


 あらかた拾い終わると、名を呼ばれた。顔を上げれば篠崎が片手にバインダーを持ってこちらを見ていた。そしてその少し後に会長も歩いてくる。



 会長の右手首には縄が取り付けられ、その縄の先は篠崎が持っていた。私は一体何を見せられているんだろうか。


「……会長が、逃げるんだ」

「あぁ……」


 苦渋に満ちた表情をする篠崎を見て、同情した。学園祭が近くなって、生徒会の仕事が増えてきてわかったが、生徒会長は本当によく逃げる。のらりくらりと消えていく。そんな会長を逃さないためなのだろう。


「そっちは? ……なんか散らばってるけど」

「色々あって投げ捨ててしまった装飾品」

「何があったんだよ」


 色々だよ。


「楠木さんが脚立から落ちたのかな?」

「はい……あたしが落ちました……それを間切ちゃんにキャッチしてもらいました……」


 落ち込んだ様子の楠木先輩が答えた。会長はエスパーか何かなんだろうか。いや、あれかな。暫く一緒にいると行動とかよめてくるやつかな。あとなんか篠崎から「お前も大変だな」って視線を向けられてる気がする。校内で会長を縛り付けて移動している君よりはマシだと思うよ。


「って、もう校内の飾り付けですか?」

 篠崎が聞いてくる。まだ学園祭まで一週間以上あるからな。

「校内は広いからね。人数が少ないから少しずつやっていかないと」


 人手不足って辛いよね、と会長が嘆いた。人手不足は否定できない。一応学園祭実行委員はいるけれど、そちらはそちらでやることがある。校内の飾り付けは生徒会の仕事だ。


「篠崎くんたちは何を?」

「必要な機材のチェック」


 確認項目の書かれた紙を篠崎がこちらに見せてきた。


「もう終わったの?」

 項目にはすべてチェックがつけられている。終わったのだろう。


「まぁ。因みにこれは俺一人の仕事。その途中でのんびり校内をぶらつく会長を見つけたから連行してんの」

「連行されてるんだ」


 そういえば会長の机の上に書類おいてあったな。逃げたのか。


「二人とも、もう遅いから帰宅しよう」


 会長にそう言われて時計を見ると既に完全下校間近となっていた。今日は夕飯係でもないので気にしてなかったから気が付かなかった。


「帰りますか先輩」

「そうしよっか」


 先輩と残りの床に散らばった装飾品を拾い集めて生徒会室へと足を進める。篠崎と会長も手伝ってくれた。


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