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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
中学生編
103/232

26話

「兄さん。あの新聞どういうこと?」

「やられた。まさか合成してくるとは」


 放課後の生徒会室で聞けば兄はそう言う。やっぱり合成か。


「訂正しないの?」

「今は放置」

「大変じゃない?」

「それよりも学園祭準備がしたい」

「あっはい」

 兄が言うなら。


「間切さん大丈夫だよ。しばらく放置するだけで、後で対処するから」


 生徒会室、会長の椅子に座って書類を眺める相良先輩の顔は余裕そうである。まぁ上二人がそう言うなら放置でいいか。私の方に何か害があるわけでもないし。さて、私もやることやってさっさと帰ろ。……あ、そういえば。


「写真にいた女性は誰ですか?」

「ん? 戸柄智代梨。生徒会メンバーだよ」

「見たことないです」

 中等部2年の先輩、東雲先輩、兄、相良先輩以外にもいたのか。見たことないけど。

「幽霊部員みたいなものだよ。いないものとして扱って構わない」

 相良先輩がとても辛辣である。


「彼女はねー、中等部1年の時に間切くんに告白してるんだよ」

 ニマニマと笑う相良先輩が教えてくれた情報は初耳だ。

「会長」

「それでねー、間切くんは断ったんだけど、彼女、愉快な思考回路しててね」

「会長」

「告白を断られたのは間切くんが照れていたからって解釈して、間切くんに付き纏ってたんだよ。少し前から落ち着いてきてたんだけどねぇ」

「なんで知ってるんですか会長」

「風の噂」

  風の噂かぁ。


「一昨日かな? 中庭に呼び出されて、再度告白されたんだよね?」

「なんで知ってるんですか」

「断ったらこれだもんね。凄いや」

「なんで知ってるんですか」

「風の噂」

 風の噂って凄いなぁ。


 二人の会話を聞きながらそう思っているととあることに気がつく。兄が笑っていない。


「兄さんが猫かぶってない」

「ん? あぁ、この人に猫被ってたら仕事できないからな」

「なんで?」

「脱走するから」

「は?」

「気がついたら逃げてる。波留も気をつけるんだぞ。そろそろ忙しくなってくるから、脱走する回数が増える」

 兄は真顔である。脱走するのこの人。

「少し休憩してるだけだよ」

「少し、ですか。……波留、最悪椅子に縛り付けていいぞ」

「後輩が容赦ない」

「縛り付けられたくなかったら仕事してください。ただでさえ人数少なくて大変なんだから」

「善処するね」

「波留、生徒会全員に縄常備させよう。もういっそガムテでもいい」

「兄さん落ち着いて。ガムテは痛い」

「服の上からなら問題ない」

「服脱いだら逃げられるよ」

「それは困る」

「後輩が手厳しい」


 はははと笑う相良先輩は楽しそうだ。

 私が知る限り、兄が猫を被らないのは身内と一宮さんだけだ。相当信用してるか、付き合いが長くないと素を見せない。そんな兄が素で接しているんだ。たぶん良い人なんだ。なんか妙にいろんな噂を知っていたり、脱走したりするらしいけど。





 後日、至極真面目な顔をした兄から縄を渡された。

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