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脇役らしく平和に暮らしたい  作者: 櫻井 羊
小学生編
10/232

 体育祭も終わり、いつも通りの日常が戻った。






 はずだった。


 私は今、赤坂と裏庭の隅で身を潜めている。



「……俺達何してるんだろうな」

「……上級生から逃げてるんだよ」


 そうなのだ。私は上級生から逃げている。たぶんリレーを見たんであろう運動クラブ所属の上級生が私を追いかけてくる。兄さんには忠告されていたが、これほどとは。まさか窓から飛び降りて逃げる日が来るとは思わなかった。相手は上級生、どんなにこの体の身体能力が優れていようとも、体格差というものがある。こうでもしないと逃げ切れなかったと思う。上級生は強かった。

 私が先輩から逃げて走っていると、同じように切羽詰まった様子の赤坂に出くわした。少し離れたところから聞こえる赤坂を探しながら倶楽部に勧誘しようとする男子の声を聞いた私はすぐに合点がいき、赤坂の手を引いて以前校舎探検していたときに見つけた人通りの少ない裏庭の奥に逃げ込んだのだ。そして今に至る。


「何で俺追いかけられてるんだろう」

「クラブ勧誘」

「クラブに入る気ないのに……」

 私もない。


 第一、なんで彼らはあんなに私達を入れたいのか。中高の部活ならわかる。大会とかあるだろう。しかし小学校のクラブに大会は……あるのか? もしかして小学校のクラブにも大会があるのか? それなら戦力になりそうな人間を入れたいと考えてもおかしくないか。いやでも私達はまだ1年生。たしかクラブは4年生からのはずだ。なぜ勧誘する。早すぎるだろう。

 私が困惑しているとこちらを通り掛かった上級生の声が耳に入ってくる。


「にしても、部長はなんで一年生を?」


 おお、ナイスタイミング。私も疑問に思っていたことだ。


「今から育てて正式にクラブに入ったときに即戦力にしたいんだって」




 ふむ。英才教育的なやつですね。



 断固拒否。



 上級生の声が遠ざかっていく。そろそろ出ても大丈夫だろうか? 日が沈みそうなので帰りたい。


「……上級生こわ…」

「それな……」


「あぁ、二人ともこんなとこにいたのか」

「兄さんっ」


 救世主かな? 兄さんに後光がさしてるように見える。

 赤坂と怯えていると、ひょっこりと兄が顔を出した。救世主だね。さすが兄さん。


「二人とももう帰ったって言っておいたからもう平気だと思うよ。先生方も勧誘の仕方が酷すぎるってお怒りだったし、たぶん明日からはこんな怖い事にはならないと思う。二人とも出ておいで」

「兄さん最高! ありがとう!!」

「ありがとうございます」


 感動のあまり兄に抱きつけば兄は優しく頭をなでてくれた。そして兄は赤坂の頭も自然に撫でている。凄いな。


「二人とももう帰るよね? 鞄取っておいで。波留は上履きちゃんと拭くんだよ」

「あいさ」

「はい」


 校門で待っているという兄と別れて赤坂と二人で教室まで向かう。うん。なんか自然と赤坂と一緒に帰ることになってないか? これ。まぁ兄もいるしいいか。


「お前の兄さんかっこいいな」

「でしょー」


 兄さんは私の自慢である。


 教室から鞄を取って校門に行くと何故か辻村もいて、4人で帰る羽目になった。

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