五二話 ~久しぶりの採取~
特筆するような変わった出来事はなく、あれから半月の時間が経った。
今日は日課のモンスター退治を休んで、久しぶりに薬草の採取をしようと思ってクルスさんを誘ってみたのだが……
『悪い、今日は予定があってな。付き合えない』
と、見事にフラれてしまったので、レニアと二人だけで行くことにした。今は採取依頼を受けるためにギルドへ向かっている……そういえばレニアと街の外で二人きりになるのは初めてだよなぁ
「どうかしたの?」
「いや、ちょっと考え事。お前と二人で街の外に行くのって初めてだなーって」
「あ、そういえばそうだね。ギルドに向かうときとか街の中ならよく二人きりになるけど」
「だろ?だからなんか新鮮に感じるんだよ」
特に中身の無いことを駄弁りながら街を歩いているうちに、ギルドに到着した。……一応釘は刺しておこうかな
「……一応言っておくけどさ。今日は喧嘩すんなよ?クルスさんがいないから、俺だけで仲裁することになるからな……」
「喧嘩は自然に起こるものだよ?するなって言われてしなくなるなら最初からそんなことは……痛ッ!」
完全に喧嘩をする気満々という様子のレニアの頭を少し強めのチョップで叩いた。
「……まぁお前等は言い合いばかりだけどな?殴り合いになるよりはマシだけどな?ヒートアップされると受付が出来なくなるしさ。何よりも俺の胃が痛くなる」
声を荒げないように、出来る限り淡々と日頃の苦情を聞かせる。
「ボクは今暴力を振るわれて頭が痛いんだけど!」
なんだか的外れな反論をしてくるが、俺は精神的な痛みも伴っているのだ。こいつのはただの物理的な痛みでしかない。……というか一発だけのチョップは暴力には入らないのではないだろうか
「チョップは暴力には入らんだろ」
「十分に入ると思うよ!?声が漏れるくらいの痛みはしたよ!?」
「それは悪かったな。でも叩かれたくないなら開き直るのを止めろ。仲裁する側の身にもなってくれ……」
「……じゃあ今日は外で待ってる」
レニアは不機嫌そうに頬を膨らませ、入口の横に移動した
「それが一番いいな。ユーナさんにはお前もついていくって伝えておく」
せっかくだ、ユーナさんにもどうしていつも喧嘩を始めるのか聞いておくか
「暑いから直ぐに済ませてきてねー!」
「いや、どれだけダラダラしても十分も掛からないだろ」
そんな下らない問答をしながら、俺はギルドの扉を開いた
「はい、受注完了です。気をつけて行って下さいね」
「ありがとうございます。……ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですかね?」
ギルドを出る前に、俺は思いきってユーナさんに質問をしてみることにした
「なんですか?」
「なんというか、ギルドの関係ではなくてユーナさん個人に聞きたいことなんですけど……。なんでいつもレニアと喧嘩になるんですか?」
思い切ったと言っても、さっき決めたことを口に出しただけなのだが、……まぁ理由がお互いのことが嫌いなだけだとどうしようもないけど
「……なんででしょうね、私にも分かりません。別にあの子のことが嫌いってわけではないんですけどね?私はそういうコミュニケーションだということにしてますよ」
「……原因不明とは厄介なことで。……でも出来れば顔合わせる度に喧嘩するのは控えてくれませんかね……毎回仲裁するのも大変なので」
……どうやら余計な心配だったらしい。冷静に考えればそうだよな、そもそも本当に嫌いなら関わろうとしないだろうし
「前向きに考えさせてもらいますね。ほら、今日は暑いですしあの子も干からびますよ?早く行ってあげてください」
「おっと、そうだった。今回も大量に持ってきますので楽しみにしておいてくださいねー」
そう言って俺は受付から背を向け、出口に向かって歩き出した
「はい、何かあったらしっかり守ってあげて下さい。あんなのでも一応私の友達なので」
「いや、あんなのって……。言われなくてもちゃんと守りますよ。撤回はしませんって」
ユーナさんの方を向き。後ろに歩きながら返答し、俺は今度こそ出口の扉を開いたのだった




