炎天下でのサッカー
それはとある夏の日、俺の家で代わり映えしないメンツでゲームを遊んでいる時に悠斗がいきなり立ち上がったのだ。
「よし!サッカーしに行くぞ!」
「「「断る」」」
「即答だな!」
こいつはふざけてるのか?今日の気温は37℃超えてるんだぞ?
「一応理由を聞こうか、先ずは龍斗からだ」
そんなもん簡単だ。
「暑い、だるい、動きたくない、そもそも俺はインドア派だ」
「次は一也だ」
「龍斗と同意」
「そういうのはずるいぞ!次は准」
「僕も二人と同じ」
どうやら二人とも俺と同じ理由だったらしい。
「そういうことだから多数決でお前の負けだ。諦めろ」
そう言ってゲームに戻ろうとした瞬間だった。悠斗が悪い表情をしていた。
「ふっふっふ・・・ハハハハハハハ!」
こいつヤバイ!いきなり笑い出したぞ!
「どうした悠斗!遂に頭が狂ったか!?」
「失敬な・・・だが残念だったな!断られることなんざ見越していたに決まってるだろ!だからおれはこれを用意していたのさ!」
そうして悠斗は背中へ手を回すとどこからか本を取り出した。
「さぁ問題だ!これはなんだろうなぁ!?」
おい・・・待ってくれよ、よく見たらあれは!
「悠斗オオオオオオ、テメエそれを・・・それをいつの間に取ってやがったああああああああ」
悠斗が取り出したのはは俺の秘蔵のエロ本だった、ちなみに中身は貧乳ボクっ娘ものだ。
「ハハハハハハハ!サッカーに行くことを受け入れなければおれはこれを・・・」
「燃やすつもりか!?」
「安心しろ。そんなことはしない。・・・ただこれをお前が飯を食ってる時に親の前に掲示してやるだけだ!アホなことに名前まで書いてあるから言い逃れは出来ないぞ!」
「せめて燃やせええええええええええええっ!」
エグい・・・なんてエグいことを考えつくんだこいつは・・・
「あ~あ、残念だったね龍斗」
「ああ!お前の分も俺達がゲームするからサッカーしてこい!」
「裏切り者共がああああああああ」
悠斗の方を見てみると再び悪い顔をしていた。
「は?一也も准も何を言ってるんだ?勿論お前らも行くに決まってんだろ?」
「なんで?僕らは関係ないだろ?」
「准の言うとおり俺らには実害ないし」
よし決めた。後で三人ともぶん殴るわ。
「フフフ・・・フフフフフ・・・ふははははははは!まさか龍斗の分だけだとでも思っていたか!」
「「なに・・・まさか!?」」
「そうだ!そのまさかだ!二人の分も勿論持っている」
そう言うと再び悠斗は背中に手を回し・・・
「「悠斗オオオオオオオオオ!」」
二人の持っていたエロ本も取り出した。
「さぁ!これを燃やされたくなければお前らはおれとサッカーするしかないんだよおおおおお!」
「「「鬼!悪魔!鬼畜!」」」
「フフ・・ふはははは!何とでも言うといい!」
こうして俺達は悠斗にほぼ強制的に外に連れて行かれたのだった。
そして悠斗の奴はなにをとち狂ったのか俺達をもう管理する人も住んでいる人もいない廃ビルに連れてきた。
「よし!目的地に着いたぞ!誰からボール蹴るよ?」
「うん、その前に聞いておこう。なんで俺達は廃ビルの前にいるんだ?」
サッカーって普通は公園でやるものだよな?
「だってここなら基本的に人が来ないから邪魔も入らないだろ?」
「確かに来ないけどさぁ・・・」
なんか得体の知れないモノが出て来てもおかしくないだろうに。
「もういいか?誰からボール蹴る?」
「はぁ・・・誰でもいいだろ」
「・・・同意だよ」
「言い出しっぺの悠斗から蹴ればいいだろ・・・」
「お前ら!元気ないぞ!学生は元気に過ごさなければ!」
この野郎・・・どの口が言うか。
「俺らが元気ないのは100%悠斗のせいだけどな!」
「「そうだそうだ!」」
「まぁいいじゃねぇか過ぎたことはさ。・・・文句ばっか言ってると人質を燃やすぞ?」
「「「早く始めようぜ!」」」
「よろしい」
・・・この野郎!
「よーし!俺から蹴るぞ!」
「いいぞ来い!」
悠斗がボールを蹴ったその瞬間だった。
「・・・・え?」
俺の真横を大砲でも撃ったかの様なスピードと威力を持ったボールが掠めていった・・・
「悪い!力の調整思いっきりミスった!」
悠斗が謝ってきたがそれどころではない。
「し、死ぬかと思った・・・」
悠斗がコントロールをミスらなければ今頃俺は死んでいただろう・・・
「ホントに悪い・・・」
「ふざけんな!今のはマジで死ぬかと思ったぞ!あそこのコンクリを見てみろ!完全に崩れてるぞ!」
「ごめん・・・」
まぁこんなアクシデント予想してなかった俺にも少しは非があるだろう・・・それでも1:9ぐらいだけどな!
「はぁ・・・分かったよ。でも次からは注意しろ」
「ホントに悪かったな・・・」
「くどいぞ!もう気にしてないから、お前も切り替えろ!」
「あぁ・・・分かった。お前がいいなら」
気分を切り替えて俺達はサッカーを続行した。
そうして気がつくと青かったはずの空はすっかり夕暮れに染まっていた。
「ありゃ?いつの間にかもう6時じゃん」
「・・・マジか、すっかり夢中になってたな」
「最初は面倒だと思ってたけど・・・やってみると案外楽しかったね」
・・・准の言うとおりだな。・・・たまにならこうやってサッカーするのもいいか・・・凄く疲れたけど。
「そうだろ?たまには体動かすのも結構いいもんだろ?」
「・・・悔しいけど確かにその通りだな」
「今日はもうここで解散にするか?」
「・・・ここ廃ビルなんだけど」
「そういえばそうだったな・・・じゃあ知ってる道まで送っていくわ」
「サンキュー」
全員が知っている道まで戻ってから俺と悠斗は一也と准と別れた。
そして家の前で
「なぁ龍斗、今日は本当に悪かったな・・・」
・・・こいつ、まだ気にしてたのか。
「その話はもういいって、もう俺はお前を許したから。ほらほらいつもの調子に戻れって、雪ちゃんが心配するぞ?」
「あぁ・・・そうだな!じゃあ龍斗!また明日な!」
「おう!また明日!」
こうして夕食を食べてから風呂に入り、寝る前にアニメを見てから今日という日は幕を閉じた。