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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
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二時間目を待ちながら(7)

ある日。二時間目を待ちながら。


「あっ、心春、見てみ。風船や」

「あっ、ほんとだ」

教室の窓から空に昇る風船が見えました。心春は風船を眼で追いながら言いました。

「これから長い旅に出るんだねぇ」

「せやな。長いかどうかは知らんけど」

「自分の出せる力を精いっぱい出して、高い空に昇って行くんだよ。少しでも高い所に行けるように応援したくなるね」

「そう? 風船は別に空高く昇りたいと思ってないかも知れへんで?」

「そうかな? タンポポが風に運ばれてるみたいで、きっとわくわくしてるよ?」

「違う違う。わくわくしてるのは心春だけや。空に昇る風船は悲しんでるって。持ち主のうっかりで否応なしに空に昇り、散々空を彷徨った挙句、持主の所に帰れる訳でもなく、ようやく地面に帰ってくる頃にはもうしぼんでしもて、最後にはゴミ扱いされてしまうんやで?」

「夏っちゃん、夢がないよぉ!」

「せやな。でも最初はうちも、風船に惹きつけられた一人やったねん」

「そうなの? 夏っちゃん」

「うん。うちが小さい時、母親に買い物連れて行ってもらった時や。帰り、店のおじさんから風船もらってな。宙に浮いてるのが、なんか不思議で、かわいくて。すごく嬉しかったねん。嬉しすぎて思わず、ぎゅ~、っと抱きしめてしまうほどにな」

「へ~、そうなんだぁ」

「そしたら割れてな」

「へ?」

「強く抱きしめ過ぎたのか知らんけど、割れてしもて、うち、びっくりしてな。大泣きしてしもたねん」

「目の前で割れたらびっくりするよね」

「とたんに風船が怖なったんやけど、母親は風船が割れて無くなった事にうちが泣いたと思ったらしくて、また風船を持って来てくれてな。もうその時点でうちには風船が恐怖でしかなかったのに。すぐにうちは泣きながら逃げたんやけど、いつの間にか迷子になってしもて、母親は散々探し回ったみたいや。それ以来、しばらく買い物に連れて行ってくれへんなったなぁ――」

「夏っちゃんと風船との間にそんな事があったんだね」

「うちと風船との出会いや」

「風船、嫌いなんだ?」

「うん。今でも苦手……」

心春と夏海は再び外を見ると、風船は遠くの方まで飛ばされて、小さなっていました。


二時間目開始のチャイムが鳴りました。


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