二時間目を待ちながら(3)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春が嬉しそうに、夏海の所にやってきました。
「ねぇ、夏ちゃん。昨日ね、お店でね、かわいい消しゴム見つけたんだぁ♪」
「ふ~ん。で、心春はそれ買ったん?」
「ううん、買ってない」
「やっぱり」
夏海はため息をつきました。
「心春は色々かわいい物見つけた、って教えてくれるけど、まず買えへんやろ?」
「うん。私は、見てるだけで楽しいの」
「なんで? 『かわいいなぁ』って思ったら、買ったりせえへん?」
「う~ん。なんて言うかなぁ~、ほら、きれいな花が咲いていたら、そのままにしておこう、って思うでしょ? それと一緒で」
「いや、一緒とちゃうよ! 心春は、ほんまに欲しい物は置いといて、実はあんまり気に入ってない物を自分の物にしようとするやろ?」
「うん。だって私が幸せになったら、他の人が幸せになれない気がするもん」
「なんでやねん! 心春がいいと思った物が、他の人全員がいいと思うとは限れへんで。遠慮せんと自分の好きな物手に入れたらいいねん。心春はもっと貪欲にならなあかんと思うわ。ま、そこが心春のええとこでもあるんやけどな」
「そう?」
「せや」
「うん、そうだね!」
「そうそう」
「じゃ、思い切って、世界一のミス女王様の座を手に入れてみせるよ!」
心春は両手をガッツポーズして意気込みました。目の奥に熱い炎が見えそうな気迫です。夏海はあっさり言いました。
「あっ、それは無理やわ」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。