表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/51

第三十一話



 昔の事を思い出していたら、寝てしまっていた彰人。

 少し、うなされたのか。


 ”聖光力”の還元は終わっていないようであるが、まだ外は暗い。

 時間を見ると、寝てからまだ一時間くらいしか経っていなかった。

 

(ありゃ? まだそんだけか。じゃあ、還元が終わってるはずも無いか)


 どうも、昔の夢のせいで、長く感じていたようであった。


 だが少し、違和感を感じる。 

 足元が、暖かい。

 そして額が冷たい。


(……ん? は……? ……タオル?)


 冷たいのは、額に濡らしたタオルが置かれていたから。

 そして、足元が暖かいのは――――


(……まじですか?)


 綾香が居た。

 そこで寝息をたてていた。


 彰人のベッドに両腕を組んで、寝ていた。


(……看病……?)


 『風邪』では無い。


 これはただの還元中。

 そのはず。


 だが、それは、純粋に嬉しい気もする。

 しかしこれでは、どちらが風邪を引いてしまうか。


 ゆっくりと体を起こし、綾香を起こそうと思った彰人。


 すうすうと寝息をたてて寝ていた綾香を起こすのも、今は少し憚られる。


(朝なら、無理やりにでも起こすんだが……)


 ここに来て、どれだけ経ったか。

 その間、朝は綾香を起こしていた。


 だが、今、この状況は、何か違う。


 何か、これは、良くない。


 いや、良い。


 いや、良くない。


 風邪では無いのだが、それでもこんな風に看病をしてくれる綾香。


(……………………えーっと、どうすりゃ良いんだ…………これ…………)


 起こそうと、綾香をするが、ふと止まってしまう。


 こんなにしてくれ、疲れて寝ているのに起こすのか?

 いや、起こさないと、風邪を引く。

 その前に、この体勢で寝るのは、良くないだろ。

 いや、でもまだ夜中だし。

 ちゃんとベッドで寝かせなければ。

 じゃあ、このベッド、は、まずいか?

 で、どうすんだよ? これ。


 そのような心境の彰人。


 幼さが残るその顔は、気持ち良さそうに目を閉じている。

 

(……どう、すりゃ、良い? ……誰か、教えてくれ……)


 ”聖光法術式円陣アヴェス”が使えれば、それに乗せても良いのだが、と考えるが、それは今は還元中。


 悩んだ挙句、彰人は綾香を起こさないよう、お姫様抱っこして、部屋に連れて行った。


(軽いなぁ。こいつ)


 綾香は起きなかった。


 静かに綾香の部屋に入り、彼女をベッドに寝かせる。


 パジャマ姿の綾香。


 少しそれが肌蹴ている。

 薄暗い部屋。

 しかし、体質上夜目が利いてしまう彰人である。

 白い、柔らかそうな肌が見えてしまった。


(まてまてまて。俺よ、待て。俺はそんなにエロじゃない。じゃない。じゃない。が、まずいだろ、これ。じゃない。が、そこまで、興味が無い訳でも……違う。待て。俺。綾香だぞ。恩人だぞ。何考えてる俺……。…………あ、……布団被せりゃいいんじゃねぇか………………)


 様々な経験をし、異世界を股に掛けて来た彰人。だが、このような事は初めてであった。


 そんな綾香に一瞬でも、疚しい事をを考えてしまった彰人。

 自制するように、一度頭をポカッっと叩く。


(と、とりあえず、これで良い。戻るか)


「……う~ん、彰人君……」


「はぃ……?」


 起きてしまったのかと思ったが、ただの寝言のようだった。


 何故だかほっとした彰人。


 そっと綾香の部屋を出て、自室に戻ってベッドに戻った。


(……わざわざ、看病してくれてたんだな……礼言わなきゃなぁ)


 そして、今日綾香に感じてしまった事は、忘れる事にした。

 もう一度寝ようとして、枕元のタオルを見遣る。


(熱は無かったと思うが。どうだろうか。あったのか?)


 嫌な事を思い出していたので、寝汗をかいていたのかもしれない。


「…………俺も…………寝るか」


 そうして、その事態は乗り切った彰人であった。



●●●



 先程のことで、少し目が覚めてしまった彰人。


 寝ようとしたが、少し気になった事が出来た。



 そこで、テニに連絡すべく、”異界交信サバス”を行使した。


 ”異界交信サバス”は”聖光力”とは別の力を使う。

 だから、”聖光力”が無くとも使える。


 しかし、テニからの連絡は、一向に無い。



(何があったんだよ? テニよ。連絡よこせよ……)



 ここまで、テニからの連絡が無いのも珍しい。


 しかし、彰人からは”異界交信サバス”で連絡したいと報告する事しか出来ない。


 仕方が無いので、彰人はベッドに横たわる。



「んー、やっぱ時間食ってるだけっぽいな。少し、”聖光力”は還元できて来たな」


 完全ではない。

 だが、力が戻って来ていた。


「でも、放出したのは戻らんのだよなぁ」



 これまで彰人が”聖光力”を放出したのは、最初の数日間の”聖光法術式円陣アヴェス”。

 その頃に使った、”聖光消滅アルリオン”、”聖光法術式滅雷サンデラス”、”聖光法術式滅炎ミルデラス”、”聖光心検視クロム”。


 そして、綾香に力を変換して渡した時。


 その時の”聖光力”はそのまま回復していなかった。


 何度か使った、”聖光体増シャミア”は、自分自身に使う術なので、”聖光法術式円陣アヴェス”と同じく、ある程度は還元できていた。



「んー。上手く還元できて、あと残り六割ってところか。んで、今日一匹、蟲を排除出来たから、あと八匹か。これ、足りるか?」


 足りなくなりそうに思える。


 それに、使った力をそのまま元に戻せる訳でもない。

 もちろん還元した所で、戻らない消費分もある。



「魔力かー。それなら、ここの世界にもあるんだがなぁ。変換できりゃ良いんだが」


 嘆きつつ、彰人はベッドに再度横たわる。


「……寝るか」


 とりあえず、今出来る事は、使った”聖光法術式円陣アヴェス”を還元して”聖光力”を回復させる事。

 それには、確かに静養するのが、一番だと思い、彰人は寝てしまった。



●●●



 翌日、一応普通に起きれた彰人。


「還元は、終わったか。あー、体中いてぇ。……んー、上手くいかんかったか。五割くらいしか残ってねぇ」


 結局、彰人の”聖光力”は残り半分くらいになった。

 それを確認していた所、彰人の部屋に、ノックが聞こえた。


『彰人くーん、起きてる?』


 綾香の声であった。


「ん、ああ」


 彰人は、この客室の鍵は閉めていない。気にしてもいなかった。


「おはよう、彰人君……」


「おう、おはよう。……珍しい。綾香がこんなに早く起きるとは」


「うん、そうなんだけど。私、部屋で寝てたんだけれど……」



 なんで自室で寝ていたのか、と言う事だと彰人も気が付く。



「……あー、昨日ここで寝てたろ。だから連れてった」


「誰が…………?」


「………………俺が」



 彰人は、身構えていた。

 また、えっちだのなんだの言われ、”聖光弓一線ティラアルコ”が飛んでくると思ったからである。

 が、違った。



「……うぅー、寝る気はなかったんだけれど……。ごめんなさい」


「……ん? あ、うん、まあ、構わん。あー、その、ありがとな。……でも、風邪じゃ無い」


「でも、すごく魘されてた……」


「そうだったのか。あー、すまん。変な夢見てただけだ」



 ――――昔の、苦い記憶を。



「もう、大丈夫?」


「……体はな」


「朝御飯食べれる? 学校行ける?」


「問題無い」


 そう、体はもう問題ない。

 問題なのは、”聖光力”が残り半分である事。

 そして、テニに連絡がつかない事。


 そして、最後に綾香に言われる。



「じゃあ、シャワー浴びて。彰人君、昨日お風呂、入ってないし」



 彰人はそれを聞いて、やはりそこから突っ込まれるのか、と頷いてしまった。




●彰人●使用術一覧。



聖光法術アンスミアード”……異世界、”聖球世界アンスデリアス”での術式総称。


”聖光力”……”聖光法術アンスミアード”を使う為に必要な力。



聖光消滅アルリオン”……指定の範囲を、誰にも感知されないように出来る術。この世界で、彰人がまともに行使が出来た術。


聖光法術式円陣アヴェス”……法陣を描く術。宙に浮かせる等し、上に乗ったり、盾のようにして使う。何故だか、綾香の魔術を反射してしまう。本来はその特性は無い。彰人が得意な術であり、この世界でもまともに行使が出来る術。


聖光体増シャミア”……身体能力を、何倍にも増加出来る術。この世界で行使出来ている術の一つ。


聖光心検視クロム”……特定の存在の、視覚や、思考をトレースする事が出来る術。綾香から禁止された。


聖光法術式滅雷サンデラス”……雷を放つ術。この世界では、出力が安定しない。


聖光法術式滅炎ミルデラス”……炎を放つ術。この世界では、出力が安定しない。


”暗集働術”《プラスター》……投げて当てる、黒い玉を作り出す術。”聖光法術アンスミアード”とは別の術式。


界順時停グリア”……特定の範囲の時を止める術。厳密には、止めていない。”聖光法術アンスミアード”とは別の術式。


異界交信サバス”……案内人、テニに、連絡がしたいとだけ伝えられる術。”聖光法術アンスミアード”とは別の術式。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ