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第二十六話


 日曜の夜。 


 綾香の家に寄生、いや、居候している彰人。


 夜になり、綾香の夜の〝残滓ざんし〟の探索に付き合う。

 それは、異世界の異物を探す為でもある。

 夜の街を歩きつつ、話をする。


「ねぇ、異世界の異物って、消さないと駄目なの?」


「ああ。放っておくと、後々、面倒になる事が多い。特に今回は、な」


「ふーん。どう面倒になるの?」


 彰人は、別段隠すつもりは無い。

 ただ説明が面倒なだけである。


「そうだな。今回俺が受けた任務は、この世界とは全く違う世界からなんだが。そこからの蟲が十二匹程入り込んだらしい。そいつら、放っておくと、進化しやがるんだよ」


「進化?」


「ああ。この世界に適応し始める。そうなると面倒でな。前に放置した世界は、その異物に支配されちまった事もあるらしい」


「へ!? し、支配?」


「ああ。言葉通りな。力がある世界から、力の弱い世界に、異世界の、んー、生物って言っていいのかわからんが。そう言うのが入り込むと、大抵そうなるらしい」


「うーん、分からない」


 やはり、ここまで説明しても、綾香には伝わらないようである。

 そんな娘である。

 だが、彰人は彼女に世話になっている上、少なからず好感を抱いている。

 出来るだけ、説明はしておきたいと考える。


「んー、そうだなぁ。まぁ、綾香に分かりやすく言えば、滅茶苦茶、力を持った良からぬ魔術師が、いきなりやってきた挙句、その街とか国とかを、好き勝手やってしまう感じだ」


「あっ、それなら分かりやすい。ああー、それって良くないよー。術を悪用したら、堕ちたと見なされるよっ」


 ああ、綾香らしい、発言だと感じる彰人。 

  

「んー。まぁ、それを平然と遣って退ける輩って事だな。いや、そもそも、そういう事が判らないのか……」


「えぇー? じゃあ放っておいたら、良くないよー」


「だから、俺がこうしてこの世界に来て、こうしてそいつらを探してる」


 彰人は、彼女に嘘をつく事は、一切しないと決めていた。

 それは、彼女が純粋な娘であり、かつ、彰人に色々世話をしてくれた礼でもある。


「だがなぁ、その残滓ざんしは、ここの固有の魔術みたいでなぁ。俺にも探せん。はっきり言って、困る」


「ふーん。でも私は探せるよ?」


「だから、付いて来てる」


 それは嘘偽り無い事である。

 何故か、あの魔術の〝残滓ざんし〟は、彰人には感知が出来ない。

 極稀にそう言う事もあるらしいが、彰人にとっては迷惑な話である。


 それは、その世界の固有の術等に、その異物が入り込んだ時などである。

 そして、今の状況が正にそれであった。


 そして厄介な事に、その堕ちた魔術師の魔術とやらは、いつ、何処で出るのか分からない。


 だが、いつ、というのはまだ分からないが、何処で、ならば綾香が分かる。


 だからこそ、彰人は綾香に付いて来ていた、のもある。

 

 だが、これだけ世話になっているのだ。

 恩を返さないといけないと、彰人は考えていた。


「でも、それじゃ、その異物って、結局どんな物なの?」


「うーん、それも少し説明が難しい。ああ、でもな、あの残滓ざんしに近い物だ。それが一個一個、知性がある感じかな」


「ふーん。……はれ? ……えーっと、それが、十二匹……?」


「そう聞いた。はっきり言って、多い」


「ええー! それ大丈夫なの!? 彰人君、大丈夫?」


 綾香に詰め寄られる彰人。

 彰人は、いくつかの世界を渡り歩いてきている。

 が、このように、女の子に詰め寄られると、さすがに少し驚く。


「あ、ああ。た、多分な。うん、め、面倒だが、なんとかする。うん」


 少し、目を逸らしつつ、彰人は答える。

 まぁ、この辺は普通の感覚の彰人。


「えぇー、本当? 大丈夫? 十二匹って」


「あー、そうだ。一匹はもう消したな。で、多分もう二匹、綾香が倒した」


 彰人は、思い出しながらそれを言う。


「へ? 私が? どゆこと?」


「一匹は、あの時だ。ほら、あの龍の顔」


「あっ。あれ? そうだったの?」


「多分な。んで、もう一匹は、あのウサギだ」


「ええ? あれも!?」


「ああ。あれは確実にそうだった。んでだ、もう一匹は、俺が倒した」


「ええーっ? いつの間に?」


「ああ。転校してくる前だな。助けた人が、担任だったのは驚いたが」


「牧野先生!?」


「ああ。あの人に、憑依してかけてた。まぁ、深くなかったからな。そこは心配ない」


 どうやら、綾香も大分、分かって来たようである。


「そんで、あと九匹だな」


「それでも多いよー」


「ああ。でもな、俺が消したやつなんだけどな。そいつ、人に憑依しかけてたから、言葉を使った」


「へ? お話したの?」


「一方的に言われた感じだったが。んで、そいつが消える前に言ってたんだよ。あちらに憑依するべきだったってな」


「あちら?」


「それが、多分、その魔術の残滓ざんしの事だと、俺は考えた」


「ふーん。でも、術を悪用しちゃ駄目なんだよぉ?」


「いや、だから、それが通じないやつらなんだが」


 そんな事を話しつつ、綾香と彰人は、〝残滓ざんし〟の探索を行う。


 綾香は、代々の務めを果たす為。

 彰人は、異世界の異物を消す為。


 そんな二人の前には、今日は〝残滓ざんし〟は現れなかった。


 彰人は考える。


(これ、まじ時間かかりそうだぞ。転校してて良かったかもしれん)


 綾香に感謝しつつも、異物の排除をどうするか、今はその事を考えている彰人であった。


 

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