表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/51

第二十五話


 次の日、昨日は出なかったのだが、今日は休日の部活の練習に参加する事にした二人。


 この諫見高校は、確かに部活は強制で入らされるが、さすがに、休日の練習は強制されていなかった。


 そんな訳で、昨日は休んだ二人だったが、今日は出る事にした。

 理由はもちろん、綾香の”聖光弓一線ティラアルコ”の練習の為である。

 

 綾香の早気はやけは、今の所悪影響でしか無い、と彰人からも指摘された綾香であった。


 二人が弓道場に着くと、既に何名かは練習していた。


 しかし、あの鬼部長、小林真也の姿は無い。

 綾香は、珍しいと思った。

 それぐらい、弓道に情熱を傾けている部長である。


 その代わりと言うか、女子部長の緑菜穂は居た。


 この弓道部、道場の関係か、男子と女子は一緒に練習を行う。

 そして、男子の部長、つまりは小林がトップで、女子の部長、緑は副部長、と言った感じであった。


「おはようございまーす。緑先輩」


「おはようございます」


 綾香と彰人は、一緒に弓道場にやってきた。


「あら、おはよう。仲良いわね」


「ちちち、ちが――」


「ああ、そこでばったり合いまして」


 彰人は、いけしゃあしゃあと、嘘をつく。


(この人、色々大丈夫なの?)


 綾香は平気で嘘を言う彰人に、少し心配する。

 そして、こっそり言う。


「ちょっと、彰人君」

「なんだ?」

「あんまり、嘘ばっかり言ってると、舌抜かれるよっ」

「そうなのか? いや、俺はどっちでも良いんだが」


 納得したのか、彰人は再度言う。


「すみません。そこでばったりは嘘です。綾香んちから一緒に来ました」


「ぎゃあああああっ!」


 そこまで本当に言うかと思った綾香。

 絶叫してしまった。


「あら、そうなの? お二人さん仲良いわね」


「そそそ、それはっ!」


「綾香のうちに、厄介になってるんで」


「ぎゃあああああっ!」


「…………同棲?」


「違いますっ! 彰人君はっ! えーっと、えーっと、寄生してるだけですっ」


 よく分からない事を返してしまう綾香。

 どちらもそう、変わりは無い。


「寄生って、それ違う」


「とと、ともかくですねっ、そのー、あのー」


「綾香のお母さんは知ってるのよね?」


「ええ。沙智子さんのお陰で、助かってます」


「それなら良いんじゃない?」


 どうやら、緑は、彰人は、綾香で無く、沙智子を頼って、間渡の家に居るのだと思ってくれたようである。


「えーっと、その、お母さんの、知り合い? みたいなぁー」


「ま、どちらでも良いから、道場で練習するなら着替えてきなさい」


 緑はあまり関心が無いようであった。


 他の部員がほとんど道場に居なかったのは、綾香にとっては幸いであった。

 

 そして、二人は着替える為に、一度道場を出る。

 着替える場所は、道場の外の別の部室にあった。

 さすがにそこは、女子と男子で別れている。


 そして、彰人の弓道衣、かけ、弓、そして、矢は、これまた綾香が、家の物置から引っ張り出して来た物であった。


「もうっ、変な事言わないでよっ!」


「いや、正直に言っただけだが」


「正直すぎるっ」


 そうは言う綾香であるが、確かに事実である上に、しばらくはこの彰人は綾香の家に居るようである。

 親戚と言った方が、後々良いかもしれないと思った。


 そして、二人は弓道衣に着替えた後、道場へ向かう。


 神棚に再度手を合わせ、弓道場へ入った。


「あのー、緑先輩。部長は?」


「ああ、小林君、今日は用事あるからって、お休みよ」


「あ、えーっと、じゃあ私達は……」


「ええ、二人とも道場で弓を引いてもらって良いわよ。黒川君、ここの道場じゃ初めてよね。見せて貰いたいわ」


「ああ、うん。はい。そんじゃあ」


 そして、彰人は弓を引く。

 その綺麗な射法に、綾香は見惚れてしまった。


 彰人の弓は、20キロと言う、とても重い弓であった。

 綾香は使えない。

 だが、これまた親戚が置いていった弓があったのだった。

 昨日見つけて整備した。

 ちなみに整備は、彰人が行ったのだった。


 その重さの弓であると、矢の速さはかなり早い。

 そして、ほぼ真っ直ぐに飛ぶ。

 10キロ程度の軽い弓だと、矢は弧を描いて飛んでいく。


 彰人が放った矢は、真っ直ぐに的のほぼ中心に当たった。

 それを見た緑は、感心していた。


「うん、これは掘り出し物ね。男子の団体戦も期待が持てるかしら」


 そう言う緑もまた、綺麗な射法を持つ人物である。

 伊達にここの女子部長を務めていない。


 そして綾香は、途中までは良いのだが、どうしても引き分けから射法が乱れてしまう。


「じゃあ、黒川君はそのまま続けて。綾香、折角だし、引いてみて」


「はいっ」


 そして、弓を引く綾香だが、やはり途中で乱れてしまう。


「綾香、やっぱり、早気ぎみ。もっと会の状態を維持しないと」


「うぅー、すみませんー」


「ああ、それ、俺も思ってたんですよ」


 先程、弓を引いていた彰人も話に参加してくる。

 どうやら、自分の矢を全て放ってしまったようであった。

 

 綾香がふと見ると、その矢は綺麗にほぼ的の中心に全て当たっていた。


(な、なんでぇ~?)


 綾香は、もう彰人が”聖光弓一線ティラアルコ”を使ったほうが良いのでは無いかと思ったくらいである。


 その後、しばらく緑と彰人に見て貰いつつ、練習を重ねた綾香。

 だが、中々早毛が克服できない。

 そもそも、そう簡単に克服出来る事でもない。


「綾香、今ならまだ治すのは無理ないから。私が、合図するまで、離れないで」


「ああ、じゃあ引き分けの所、俺、見ましょうか?」


「あら。良いかもね、それ」


(ええ~~~。うぅ~、そりゃ彰人君、上手だけどぉ~)


 結局、彰人に指導を受ける事になった綾香。

 弓道の指導で、特に引き分けの所は、かなり体を密着させられる。

 そんな訳で、綾香は引き分けの際に、彰人に近くまで体を寄せられていた。


「綾香、もっと左手に力入れろよ。まだ離つな、待て、もっと、体伸ばせ」


「うぅー」


 弓を引いている、両手を無理やり押される感じなので、自然と体が密着してしまう。

 そんな感じ。

 小林の時は、こんなに恥ずかしくなかったのに、何故だか彰人だとすごく恥ずかしく感じた綾香。

 合図の前に離してしまった。


「あぶねっ」


「綾香っ、まだ合図してないわ」


「はぅ、ごめんなさい~」


 そんなこんなの練習を、しばらく続けた綾香だったが、その日の練習は、終わりとなった。


 そして、部活の帰り道。

 綾香は不満そうに彰人に文句を言う。


「なんで彰人君、そんなに上手なのよぉー。もう彰人君が”聖光弓一線ティラアルコ”使えば良いのにぃ」


「無理だ。あの術はなんか無理」


「くぅー、悔しいぃいー」


「仕方ない。俺、昔、アーチャーだったし」


「……は?」


「一時期だけだったけどな。しばらく、弓で生活してたんだよ」


「へ? それって、異世界で?」


「そう。んで、そこに行く前も、弓道部だった、みたいだ。確か、二段だったかな」


「ええー!? 二段ー!?」


「まぁ、そっちはなんとなくしか覚えが無いが」


 成程、上手な訳だ、と綾香は思う。

 だが気になる事があった。


「彰人君、異世界で、あーちゃー? それって弓を使うお仕事?」


「そう。仕事、というか、何と言うか。けど、最終的にミリアルドパラディンマスターになった」


「みりあるどぱらでんますた?」


「……いや、分かり辛くてすまん」


「どんなお仕事?」


「仕事、じゃないんだが、まぁ、何だ。最初は弓を使ってて、そんで剣も使ってて、それから法術も覚えて、聖練を受けて、とどめに、異界の術を覚えて、最終的にこうなった」


「長いっ! 分からないっ」


 残念ながら、綾香には、よく分からなかった。


 彰人の経歴は、かなり複雑なのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ